今日は宮地くんの誕生日だから彼の大好きなうまい堂のケーキを買って行って、宮地くんの部屋で二人で食べて、おめでとうを言ってプレゼントもあげて、そのお礼も言ってもらって。 誕生日という記念日の一連の流れに沿って今日という日が終わりになるのだと思った。 だけど宮地くんはお礼を言ったあと、まだ何かを言いたそうに目を泳がせてどこか落ち着かない雰囲気をしていた。 「宮地くん、どうかした?」 「いや、」 なんでもないんだ、って。 なんでもないわけないような態度なのに、いくら私が鈍感だからってそこまで人の気持ちに反応できないくらい酷くはない。 「宮地くん」 さっきとは違い咎めるような口調で彼の名前を呼ぶ。瞬間目が合って一気に顔を赤らめた彼は口をパクパクさせながら言葉にならない声を発していた。 「その、あ、いや…」 すまん、そう一言言って彼は私にキスを一つ。そんないきなりの行動にびっくりして私の思考は一時停止。間抜けな顔をした私に対して宮地くんは顔を赤らめていて。何かおかしいような気がするけどもうこの際気にしてられない。 「み、やじくん?」 「あー…その、なんだ、」 お礼も言ったんだから言うことはないはずなんだが、いやその別に話すことがないと言いたいわけではなくて…。 いつも寡黙な宮地くんにしてはよくしゃべっていて、でもどこかおかしくて、言いたいことが全然まとまってない。 「………?」 「あー、もう…、」 瞬間、柔らかな香りと暖かな空気に包まれた。さっき一緒に食べたうまい堂のショートケーキの甘い香りと、宮地くんの優しい体温。 うん、大丈夫、言葉なんかなくたって一瞬で伝わった。 「宮地くん」 「夜久」 ゆっくりゆっくり名前を一文字ずつ噛み締めるように呼び合って他に言葉は発さない。 夢心地のような二人きりの空間で微睡むと、お互いの体温がより感じられて、ああ、だいすき。 私はゆっくりと目を閉じて彼に身を任せた。 ねえ、言葉なんかいらないよ (抱きしめるだけで十分じゃないか) 11/03 Ryunosuke Miyaji HAPPY BIRTHDAY! 2011/11/11 |