※関口に罵倒される夢主がいますのでご注意



関口はナマエの顔面スレスレの壁を脚で蹴った。ミシリと軋みをあげた壁にはくっきりと関口の足跡がついており蹴りの力強さを物語っている。

「この馬鹿女が」

関口が唸りながらもう一度壁を踏みつけるとナマエがビクリ震える。青い顔で唇を噛み締めたナマエの目には涙が溜まっていた。心底怯えている、ように見える。

「脳みそちゃんと詰まってんのか?代わりにゴミでも詰まってんだろ。頭かち割って少しはまともな中身に入れ替えてやろうか」

関口はナマエの顎を乱暴に掴んで上向かせる。顎を掴んだまま揺さぶるとナマエの頭はぐらぐらと動き溜まっていた涙が頬を伝うと、ほんの一瞬関口の手が緩む。
奥歯をギリギリと噛み締めた関口は更に続ける。

「ガタガタ言わずに素直に俺の言うこと聞いて…聞いて……」

関口の言葉が途切れ途切れになる。
関口の頬からだらだらと汗が流れ、口からは自然にハアハアと荒い息が出てくる。
心臓が先程からバクバクとうるさく、目の前がチカチカしてきた。気の遠くなりそうな感覚に関口は己の限界が近いことに気づく。

「もう勘弁してくれねぇか」

関口は絞り出すような声で降参を示した。
なんだって愛しい女を詰らねばならなんだ。ホントに辛い。
関口はナマエの腕を引いて立ち上がらせると怪我をしていないか確認する。
惚けていたナマエがにっこりと微笑むと関口の腕に懐いてきた。

「関口くん、最ッッツ高」

うっとりと頬を染めたナマエは関口の多大なるストレスなど知らずにご満悦だった。
世の中の変態どもの嗜好になどどうでもよくて興味はなかったが、それが恋人のことであるなら話は別だ。
ナマエには少々というにはあんまりな性癖があった。罵倒されたり詰られると悦びを感じるたちらしい。
暴力や脅しは関口の得意分野とはいえ、赤の他人や滞納者やどうでもいいやつを殴ったり蹴ったり怒鳴ったりするのと、それをナマエに向けるのはわけが違う。
関口だって穏やかな性格とは言えないが、無闇矢鱈に堅気に手を出したりはしない。むしろ見た目が厳ついので気を使って他人には丁寧に接するように心がけている。善良な堅気にはと注釈はつくが。
よりにもよって大事なナマエを真似事とは言え脅すような事をしているのだから後々の自己嫌悪が凄まじい。ナマエが喜んでいることだけが救いだった。
いまベタベタとしてくるナマエを振り払って冷たい目を向けたら喜ぶんだろうなと考えてしまうあたり重症で、そんなことは望んでない関口は物悲しい気持ちになる。

「やっぱり見込んだ通りだった」

そんな期待には全く応えたくなかった。
ナマエの要求はどんどんとエスカレートしているように思える。
関口はナマエが手をあげてと言う前になんとかしたかった。ナマエが喜ぶという理由だけでは、関口はナマエに暴力を振るうなんてとてもじゃないが出来そうにない。
その時が来るのがとても怖い。
これは一度真剣に話し合った方がいいかもしれない。どうしよう、上手くいく気が全くしない。
すると難しい顔で悩む関口の腕にやわいものが当たる。真面目に考えてる関口の思考を著しく奪い去ってしまう例のアレである。つまりはナマエの胸だ。

「関口くん元気ないね。イチャイチャする?」

「する」

ナマエは自分の欲求を通すが、関口の希望もきっちり叶えてくれる。
一方的にナマエの欲求の捌け口として搾取されるだけなら関口もこうも思い悩まないのだ。
食い気味に応えて流されてしまう関口はとてもじゃないがナマエに太刀打ちしようがなかった。


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