名前変換なしのモブの自殺表現があります。
過激な表現なので注意。









鳥が、高い所にいた。屋上の手すりに留まって、羽繕いなんてしている。
高所にいる鳥など別段珍しい光景でもなく、小戸川はそれを見ても不自然には感じなかった。
飛べない鳥もいるにはいるが、鳥は基本的に飛ぶ生き物だ。外敵から身を守るため、獲物を狩るため、食糧を得るために。
そうであるならば、地面に降り立っている時間の方が少ないだろう。
それなのに、どうしてかその鳥が気になって、小戸川はじっとその鳥を見ていた。
なんとなく数秒見つめ続けていると不意に鳥が羽を広げた。
飛び立つつもりだろう。飛び立って姿が見えなくなるであろうことに小戸川は少しだけ残念に感じていた。
果たして、ふわりと手摺りから飛び立った鳥が急降下する。丁度、隼などが降下するような綺麗な飛行だった。そんなものが見れると思っていなかった小戸川は感嘆の声を上げる。
小戸川は動物が好きだ。その生態もこよなく愛している。無駄なく、隙なく、美しい、鳥の急降下に、珍しい、良いものが見れた。そんな気分で賞賛を贈る。(実際小さく拍手してしまった)
たった数瞬の出来事は小戸川の目に美しく焼き付いていた。

鳥が綺麗に着地した瞬間にぐしゃりと奇妙な音がして、せっかくの羽が周囲に散っていた。
にわかに騒がしくなる周囲、悲鳴のような音も聞こえてくる。一体どうしたことか。
首を傾げた小戸川は周囲を見渡しても何が何だか分からない。人だかりの中心にはあの鳥がいた。

そんなに珍しい鳥だったろうか?

小戸川は他者と関わることや喧騒を好まない。
せっかくの上向いた気分に水を刺され騒がしさに辟易した小戸川は眉を顰めて溜息を吐いてこの場を去ることにした。
風が吹いた拍子に錆臭いにおいがふわりと鼻を掠めたような気がしたがきっと勘違いだろう。


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