「どうも、吸血鬼”スゴロクゲーム大好き”です。またの名をナマエ。吸血鬼向けの宿泊施設と聞いたので来てみた」

そんな事を言いつつノコノコとVRCにやってきた愚物はドーナツの箱を持っていた。
俺様に献上するのはいい心がけだが何が入ってるか分かったものではない。あとで念入りに調べる必要がある。勿論、味の方も含めて。
というわけで厳重に保管しておくことにする。

「断じて違うが、研究に協力するならその間だけ置いてやらんこともない。大天才の俺様に貢献できることを咽び泣いて喜ぶがいい」

ドーナツをしまいつつここだけは訂正しておかなければない点を訂正する。
確かこの吸血鬼の呼称は”スゴロクゲーム大好き”だったか。またの名はなんだったか、確か……忘れた。俺様の貴重な脳内のキャパシティに必要ないものだからだ。
コイツは退治人や吸血鬼を巻き込んで馬鹿騒ぎするのが好きな愚物だ。いつもの奴らと変わらん。
収容した事がないので能力等は不明なため丁度良い。弄りか…研究方法を考えていると愚物が首を傾げていた。

「ヨモツザカ君、天才って言うけど具体的に何が出来るの?」

初めて聞いた言葉を復唱するような無垢な目に言葉に詰まった。呆れたとも言う。

「見て分かれ。白衣を着ていて研究所の所長なら答など一つだ」

「実はチェスの達人だったりけん玉名人だったりするって事もありえる」

なるほど、愚物にしては考えている。知能に関しては少しだけ見直してやらんでもない。

「察しの悪い愚物な貴様に教えてやろう。俺様は吸血鬼研究の第一人者だ。ここで一番偉く世界で一番賢い。どうだ崇め奉っても構わんのだぞ」

「はあ、そうなんだ。すごいね。それで宿泊費のことだけどさ」

俺様を敬うことなく気の抜けた声で己の要件を推し進めようとする。
これだから愚物は嫌いだ。大天才に対する敬意というものがなっていない。
どいつもこいつも似たり寄ったりだ。サテツ君は多少マシではあるが。

「吸血鬼向けに特別待遇して貰うならお金だけ払うのも味気ないし特別にスゴロクの新作をあげよう。感想よろ」

「貰ってはやるが遊ぶ約束はしないぞ」

解体して研究材料になるのが関の山だろう。俺様の研究の礎になるがいい。

「大丈夫大丈夫。一定期間過ぎたら強制収容するように作った」

とんでもない爆弾をつかまされた。解せぬ。








兎にも角にもデータを収集しないことにはどうにもならない。しかし、その結果に俺様は頭を悩ませることとなる。
計測不能。測定不能。許容範囲外。成分不明。ずらずらと並ぶERRORに躍起になっていると遂には計器が煙を上げて壊れた。
何故だ。どうして。いや、天才たる俺様はこういった吸血鬼にいつかは遭遇すると想定していたことだが心の準備というやつがだな。
さしもの俺様でも無から分析は出来ない。しかし、実に興味深い。

「吸血鬼ってのは不思議の塊だからね」

その一言で納得できるなら研究者など世の中から絶滅している。そもそもそんな輩は研究者を名乗るなと俺様は言いたい。

「舐めるなよ、吸血鬼。俺様の天才的な頭脳で必ず貴様の隅から隅まで暴いてやる」

俺様でも未だになし得ないことを実現するには”未知”を理解する必要がある。
こいつの生態は俺様の望みを叶えることに繋がるだろうか。
そんな事を考えていたため不覚ながら俺様はいつも横槍をいれてくる存在を忘れていた。

「Y談リベンジ!」

「おっさん、絶対藪蛇だぞ!」

いつものようにピカッとやられた。特別製の仮面はY談波と呼ばれるふざけた名前の催眠波を無効化するし、野球拳に関してはいつもと変わらん。
変化が起こるとすれば目の前の吸血鬼だが何故だか野球拳は怯えていた。
奴の性格を考えれば多少は喜んでそうな気がするが…俺様の明晰な頭脳は違和感を感じていた。

「遂に地下室が完成した」

なんかホラーの導入とかにありそう。それにY談と全く関係ない。催眠耐性の強い吸血鬼はいるにはいる。
本当にY談波は効いているのか?

「これでおじさまを完璧に幸福に監禁出来る」

おっと危ない性癖のやつだったか。野球拳が藪蛇といった意味がよくわかる。
結論から言えばやはり吸血鬼はロクでもない。


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