新横浜に置いて異変が起こるのはいつものことだった。
周囲の人間が性癖暴露装置になっている時点で誰の仕業かなど分かりきった事で、退治人が到着するまで放っておこうとドラルクはたまたま遊びに来ていたナマエに言った。
Y談おじさんの催眠にナマエが屈するとはどうにも思えなかったが念のためだ。
しかし、ある意味ドラルクの期待通りナマエはY談おじさんに興味を持ってしまった。
そしてさらに間の悪い事にY談おじさんは近くにいたらしい。

「あ、おじさ」

「おやおや、可愛らしいお嬢さん。おじさんに君の秘めたる想いを聞かせてごらん」

「ナマエ君!」

何事か言いかけていたナマエだったがY談おじさんの杖の玉がピカッと光りその光をナマエはもろに受けた。
叫びつつドラルクはちょっと面白そうだなと思っていた。ナマエが焦る姿なんて想像できないが、恥じらうなら貴重な姿を見れる。しばらくそのネタで揶揄ってやろうとかドラルクがニヤついているとナマエが口を開いた。

「Yのおじさま、相変わらずお洒落なナイスミドル。このまま持って帰って飼っていいかな?」

「飼うという発想が怖い」

ドラルクは思わず真顔になる。普通に異常だった。友人の闇に触れドラルクがドン引きしている間にもナマエの勢いは止まらない。むしろ冴え渡っていた。清々しい顔で吹っ切れたように標的を熱心に見つめる。
ドラルクは標的が自分でなくてよかったと心底思う。

「閉じ込めたい。余裕ぶったおじさまが徐々に弱っていく姿はきっと素敵。やつれて抵抗する力も弱々しくなったおじさまを好き勝手出来たらいいなぁ」

「ねぇ、これ私ずっと聞いてなきゃいけないの?もう鳥肌立ってきたんだけど」

「それじゃ、私はこれでゲッ」

ナマエの性癖はまさしくパンドラの箱だったのだ。涼しい顔のナマエの口からエゲツない性癖が紡がれる。ドラルクは背筋に怖気が走った。
身の危険を感じて都合よくススッと逃げようとしたY談おじさんだったが勿論ナマエがそんなことを許す筈はなくガシッと肩を掴まれていた。
ひ弱とはいえ一人の男性吸血鬼が必死に逃げようともがいているが容易く抑え込まれる。ググッと力を込めたナマエは今まさにY談おじさんを押し倒そうとしている。
暴露させられているナマエの性癖の一端の再現にドラルクは恐怖に両手で顔を覆った。そう言えばナマエはグロが平気だ。つまり展開としてR18にGがつくことも考えられる。
でもやっぱり何も見ないのは怖いので指の間からちゃっかり見てしまう。

「その焦り顔と弱々しい抵抗も最高だ」

ブチまけたさせたのはお前なんだから責任とれと言わんばかりにナマエが迫力のある笑みを押し倒したY談おじさんに近づけた。
引きつりながらも何とか笑顔を保つY談おじさんがゴクリと唾を飲む。
Y談おじさんに最大のピンチ迫るーーーと思いきや。

「こんなもんでいいの?」

何処から出したのかドッキリ成功のプラカードを手にナマエが身を引いた。

「待って!それって催眠の効果での本音だったの?それとも冗談なの!?」

思わず問い質すドラルクにナマエはにっこりと微笑んだ。答えはない。それが余計に恐怖をそそる。

「何でも答え出したらつまらないもんね。さて、おじさま、久しぶりだから私とたくさんたくさーん遊ぼうね」

天使のような無邪気な笑顔で誘うナマエは子供の頃を思い出しているのだろうか。天使の笑顔にやられたわけではなかろうが力なく連行されるY談おじさんはしばらくは大人しくなることだろうと思う。


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