野球拳大好きは激怒した。こんな邪道野球拳があってたまるか。
オンライン野球拳ってなんだ。画面には顔しか映ってないが!?脱いだ姿が見れずに何が野球拳であろう。断固として抗議すーー

「で、やるの?やらないの?」
「やります」

馬鹿野郎が…でも好き。だって画面の向こうでナマエが脱いでるって考えるだけで興奮しない?この世界のどこかで脱いでるナマエがいるって事だよ?しかも脱がすのは野球拳大好きだ。エロいじゃん。
ヨヨイの、ヨイ。でナマエを脱がせていく。野球拳大好きの衣服も何枚か脱ぐことにもなったが野球拳は順調の筈……だ。全然分からん。
脱衣の瞬間は、これを脱いだと衣服が画面上に掲げられるだけで依然としてナマエの顔が画面に出ているだけなのである。
想像だけじゃ足りない。現物が来いよ!何処まで脱いでるの?

「俺の知らない所でどエロい格好すんなよ!!」
「不正はしてないですぅ。見届け人はちゃんと用意しました」
「こここっこの痴女めがっ!」

突然、裏返った弟の声がした。えっ、野球拳大好きを差し置いて脱衣したナマエを弟が見てるの?意味がわからない。理不尽だ。
この女、本当に滅茶苦茶しでかしてくれる。
というか弟よ、兄と代われ。お願いします。せめてナマエの姿の実況を…三男ならともかく次男には荷が重いか。
出来れば後で教えてくれねぇかな。そんな希望を胸に抱き、野球拳大好きは野球拳を続ける。
ナマエが脱衣するたびにマイクロビキニの悲鳴じみた声がする。マイクロビキニが騒がしいからそろそろナマエの際どい格好もすごくなってる筈だ。興奮してきた。野球拳大好きが弟の声で興奮してる変態のようだが、断じて違う。ナマエの姿を想像して興奮しているのだ。そこの所は忘れないで欲しい。
そして、ナマエがもう一枚脱いだ時、ふと弟の悲鳴が止んだ。

「ふーん、分かってるじゃないか」

先程まで騒がしかった弟が急に静かになった。声色に傲慢さが滲んでいる。
あっ、ナマエがどんな格好してたかわかった。わかったけど見えねぇぞクソ!地団駄を踏んだ野球拳大好きにナマエは親指を地面に向けて動かしていた。


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