ーー吸血鬼は趣味がいい。荘厳な城はいかにもな雰囲気だが、洗練された外観は建築されて長い歴史を経た今も尚、美しいと感じられるものだ。


ーー吸血鬼は目立つ。吸血鬼の居城は多くの人間に知られている。観光地になったりもしているのだから場所を調べるのは容易だ。


ーー吸血鬼は物持ちが良い。長く生きる彼らが暮らための城は常に手入れが行き届いている。


ナマエはそんな城の絵を描くことが好きだ。吸血鬼の住む城でなくてもいいのだが、この城いいなぁと思うと吸血鬼が住んでいる城な事が多くある。
なので逆に吸血鬼が住んでる城を調べた方が手っ取り早いことに気づいてしまった。
その城の絵を描いて、出来が良ければナマエは売ったりもしている。
趣味で、ついでに小金も稼げるならいい事だ。それほど期待してなかったが、びっくりするほど高額を出す客が一部いるらしい。
売却は他人に任せているのでナマエはあまり知らない。呑気に、やったぜ今夜はご馳走でウハウハだなって思うだけである。


ーー吸血鬼は財力がある。長きを生き知恵と権力を備えた存在が、数多くいることはナマエには興味がないので知らないことだった。


ナマエが描くのは昼や朝の絵が多く夜の絵はほとんどない。夜に一人で絵を描くのは危ないだろうし、なんとなく怖い。一番の懸念事項は、夜の住人である居城の主が活動を始める事だった。
吸血鬼に遭遇したことはないけれど怖い目に会ったこともある。
ナマエが絵を描いていた辺りに鳥の羽だかなんだかが多数散らばってた事があり、非常にビビったので絶対に夜には来るものかと思っていたものだ。
あれは確か日蝕の大鴉だか六枚羽だか、そんな風に呼ばれていた吸血鬼の居城での出来事だった気がする。めっちゃ怖い。
吸血鬼が単純に怖いという理由もあったが、一番嫌なのは怒られることだ。あまつさえ直接口で無礼な人間だなと城を描くことを禁じられたら困る。ナマエの趣味が減る。








とある日の古き血の吸血鬼が集う会合で、難しい顔をしたヴェントルーが一枚の絵を提出した。
此度の議題はとある画家の絵である。新作が出るたびに購入して自慢しあうのが通例となっているが、やいやいと野次を入れる面々が今日は神妙な顔をしていた。

「城との距離がいつもより近くないか?しかも夜の絵だ。珍しいな」

「どんな手を使ったのかは不明だが、最近の我々が新横浜で活動することが多くなり城に不在な事を知って近くで描いているようだ」

「なんでそんなことするの??」

散々モーションかけようとしても逃げていくのにどうしてこう不意打ちで近づいてくるんだろうか。人の子の情緒ってよく分かんなかった。


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