ニーリィとジェイスはまさしく一心同体の息の合わせ方で戦場を飛ぶ。
竜騎兵と騎竜の中でも最高峰だろう。
命を預け合うほどの仲なので当然両者の絆は相当深い。
それでもニーリィにだってたまにはジェイスといたくない時もあるだろう。

「ジェイスくんに怒っちゃった」

ジェイスがモテることに拗ねて竜房から追い出したニーリィは先程の激しさと打って変わってしょぼくれた声を出した。
人間相手に邪険な態度を取るジェイスは竜相手にはとても優しい。
その事に妬いたニーリィの機嫌を損ねることになろうともジェイスが竜を邪険に扱うことは出来ないだろう。ジェイスの性格の問題だ。
拗ねたりするが、ニーリィはジェイスのそんな所も好きらしい。
要するに俺は惚気とか痴話喧嘩に巻き込まれている。

「ナマエは私が子供っぽいって思う?」

「俺からしたら誰でもガキだよ」

タツヤと共にそれなりの長い時間を生きてきた俺からすると、どいつもこいつもガキみたいなものだ。
よってニーリィが特に子供っぽいだのどうだのとか語るつもりはない。
幼い頃を知っているからニーリィの内面は気高く、身体は美しく逞しく成長したのはよく分かっている。それでも俺からすれば結局はたかたが数十年の成長なのだ。年寄りくさいがそうとしか感じられないから仕方ない。

「あのな、ニーリィ。喧嘩したり拗ねてみたり出来るのは良いことなんだよ。ぶつかり合う機会が来る前に相手がくたばっちまうこともある」

「ナマエが言うと重みがあるね」

「伊達に長生きしてないからな。俺からすればお前だって戦場から離れればだだの可愛い女の子だよ。喧嘩くらいいくらでもしろ」

ニーリィに特別な竜であるとか、そんなものを押し付けるのはクソ喰らえである。下らない。
過去やら使命を背負い、遠い未来のためになど命懸けで戦わなくてもよい。ニーリィがそうしたいなら止めないが、周囲から強要や期待されるのは少し違うだろうと俺は思う。
普段のニーリィは特別でも何でもないただの竜の女の子だ。時折、幼馴染のジェイスの事で拗ねたり怒ったりする可愛らしい面もある。

「喧嘩じゃない。ジェイスくんは私に怒ったりしないよ。ただ困った顔をするだけ」

「ジェイスがニーリィに腹を立てる訳がないからな」

「私ばっかり怒ってる」

「ニーリィに怒らないだけで、あいつだってザイロに妬いてるだろ」

ジェイスほどでないにしろザイロも竜に好かれそうな男だ。ニーリィの好みに当てはまる部分もある。
ニーリィはジェイスとザイロが似ている部分があると言う。ジェイスはニーリィの事もあり何かとザイロと競い合っているが、確かに根本的な部分で二人は気が合いそうだった。

「だからお互い様だよ。気が済んだらジェイスと仲直りしろよ」

「もう私は怒ってない」

「それは良いことだな。ならジェイスをここに呼んできていいか?」

拗ねたニーリィの話を聞くのは主に俺だ。
そして、ニーリィの機嫌が治るまで竜房の周りをうろうろしているジェイスに声を掛けてやるのも何故か俺。
俺の勘違いでなければ二人から甘えられているような気がする。
殺し合いに発展するような決別だって経験してきた身からすると二人の戯れ合いなんて可愛いものだから、別にいいがなんでまた俺なんだろうか。仲直りに空中デートにでもいくだろうジェイスに俺も相棒の黒竜のクロと久々に飛びたいなぁなんて考えた。


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