「田中くん、このアイスニンジンのチョコ入ってる!」
「ほう……白き獣たちが食する物を模したものか。フッ、粋な真似を」
「おいしー! ヨーグルトとピーチ味って意外に合うんだね。ウサギさんってニンジンをこんな気持ちで食べてるのかなあ……」
一心不乱にアイスを頬張る少女を田中がじっと見つめている。どうやら彼は今回、何も注文しなかったらしい。
「えっと……田中くんも食べる?(自分も頼めばいいのに恥ずかしがっちゃって)」
「ふっ……ふははははっ! 貴様が寄越すというのであれば、フッ、敢えて貰ってやろうではないか。……しかし、その」
注文も1人分であったため、1人分しかスプーンを貰っていない。田中は困った様な顔をした。
「じゃあはい、あーん」
「なッ……ば、馬鹿なッ……!?」
「ちゃんとニンジンさん入ってるとこだよ。ほら、落としちゃうから早くーっ」
「くっ……! 他に手段が無い以上、止むを得ん……か。……いただきます」
田中の顔は真っ赤だった。間接キス如きでここまで恥ずかしがる男もなかなかいないものだ。
「よーしよしよし。偉いウサギさんですねー」
「お、俺様に触れるなと……一体何度言えば理解するのだッ!?」
「ご、ごめん! 可愛くってつい……」
「……貴様の方が……余程……か、かわ……いい……ぞ」
「田中くん、マフラーに埋まり過ぎて何言ってるか全然分かんないです!」
田中はしばらく目を合わせてはくれないのだった。
≫戻る