「じゃあ今日の当番を発表するぞ。十神と澪田はマーケット、左右田は軍事施設。えーっと田中は」
日向がちらりと目を向けた場所には一人の少女がいた。ぼんやりと話を聞いていた彼女はその視線を感じとる。
「わたし?」
「ああ、頼めるか? 期限まであと1日しかないから、お前はこの配置につくのが一番いいと思うんだ」
「う、うん? わたしはどこでも構わないよ?」
「そう言ってくれると助かる。じゃあ、田中と一緒に山まで採掘を頼むな」
いまいち日向の意図がわからない彼女は、それでも与えられた仕事は懸命にこなすつもりでいる。共に作業にあたる田中の元へ彼女は近寄った。
「田中くん、今日は一緒だね。採取がんばろー!」
「ククク……フッ、フハハハハハハッ! 無力なメス猫と共同作業、だと? ハッ! 笑わせてくれるではないか、日向のやつめ」
「あ、あううう……確かに戦力にはならないけど」
「フンッ、貴様はせいぜい俺様の邪魔をせんようその辺で身を震わせていろ。貴様の出る幕などない。この島に眠りし隠された秘宝の一つや二つ、俺様の手にかかれば収集など児戯に等しいわッ!」
「だったらわたし、邪魔しないように別なとこの配置の方がいいかな? 日向くんにちょっと言って」
「黙れ……! 既に決められた運命を覆す権利など、貴様にはない」
「でもわたし田中くんみたいに上手く採取できないよ? せめてお掃除とかしてた方がみんなのためにもいいんじゃないかな」
「甘いなッ! 掃除ごときで皆に奉仕できると思っているのか? 愚かな……貴様にできる一番の奉仕は俺様の補佐だけだッ! 異論は認めんッ!」
「う、ううーん。田中くんがそういうなら……。ホントに邪魔じゃない?」
「当然だ。……常に、傍にいろ」
「わかった。できる限り協力するから何でも言ってね!」
「フハハハハハッ! 貴様は横で俺様の秘技を見ているがいいッ!」
(田中、調子良いみたいだな……)
この割当ての結果、田中がジャバラルドを大量に収集することに成功し、課題は見事達成されたのであった。彼にとっての栄養補給元は彼女であるという日向の判断が、間違いでないことが証明された瞬間である。
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