手を掴み損ねた罪悪

平新+和葉
暗め












小さな小さな手を掴み損ねた夢を見た。
それはひどく哀しい悲しい夢で、きっと現実でもあった。
小さな小さな手を。
助けをもとめるような手を、アタシは掴み損ねた。
小さな小さな、アタシの。













父親が誰かと聞かれたとき、アタシは泣き真似をして、ただお父ちゃんを困らせて、誤魔化した。

もう涙なんか出ないくせに。

蘭ちゃんにどうして教えてくれなかったのと聞かれたとき、アタシはただ笑った。

そうすることしか、わからなかった。








あの小さな手は、アタシを見放したのかも知れない。
だから、自分から消えたんだ。






「俺は、」



和葉のことは、大事な幼なじみやと思っとる。
でも…。



「今更なに言うてんの。はよ工藤くんのとこいき。」

「でも…。」

「色黒が灰色になってどないするん?はよいきな工藤くんろくろっくびなってまうで。」




遠慮がち、いや、平次は罪悪を感じている。
そうやよ。こんこはな、いなくなったあの小さな手はな。


軽い気持ちで行為した、アタシらの罰の子なんやで。




なぁ、平次。
いまから工藤くんと笑いあうんやろ。
アタシのときの欲求不満の捌け口と違って愛のあるキスやセックスをするんやろ。

でも忘れんなや。

その罪悪。
一生、忘れんなや。






「平次。」



病室から出ていこうとする平次に、アタシは笑いかけた。




「忘れたら死ぬから。」









平次は、クスクス笑うアタシを呆然と眺めた。
















あれ、意味わかんな…。






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