あなたの


あなたの家族構成







そう書かれた家庭科の課題プリントをアタシはいつまでもいつまでも解けずに、気が付けば放課後まで居残りさせられていた。

最初、書いたのは自慢である大阪府警の父親。
その次にアタシ…と書こうとして、手が止まった。




周りの、クラスメイトの家族構成が聞こえてくる。
弟が何人だとかお母さんとおとうさんだけだとかお兄ちゃん妹エトセトラ。

別に父子家庭が恥ずかしい訳じゃない。



…恥ずかしい訳じゃない。







「あかん子にしとったらあかんよ。ええ子にしとかな。な?和葉。」



そう言って帰って来なかった母親を、どうしても家族じゃないと言いきれないのだ。

言い方によれば娘を捨てた母親だろうが、アタシにとっては、唯一の母親。
家族であってほしい人で。








「いつまでそのプリントと付き合っとんのかわりゃ。」



いきなり現れたのは平次。
そのプリントと生涯を共にするんかと笑いながら、アタシの前の席に座ってきた。



「…家族構成?まだこんなんでなやんどんのか。」

「だって…。」

「お前の家族はおっちゃんや。立派な大阪府警で、俺の親父の親友や。」

「ちがう…。」

「なにがや。」







「アタシの…母親…。」




いまどこにいるかもわからないその人。
もう顔も朧気で、記憶も曖昧なのに。



「お前のかあちゃんはうちんとこのおかんやろ?」

「は?」

「いまさらなにいうとんねん。」



ま、紙にそれは書けんがな、と平次は笑う。




「悩むなや。お前の家族はおっちゃんや。」




おっちゃん泣かすなや。







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