なんとも言えず



「和葉が…。」




…酔ってどうしようもないねん。









そう電話がかかってきたのは午前0時。
そう、まさに寝ている最中であった。


電話をかけてきたのは俺のいとこ。
遠山とは仲がよく、必然的に、というより高校時代よりは気に入られるようになったほうだが、何故服部に言わず俺にかけてきたのか。

服部と遠山といとこと俺と、同じ大学で同じ学部で。

そして遠山の近くに住んでるのは服部なのに。




「…行くしかあらへんなぁ。」




うだうだ考えてても仕様がない。

寝巻きにジャンパーを羽織って、聞けば俺んちから徒歩10分の居酒屋らしいから、歩いていくことにした。







「あ、きたきた総ちゃん!」



さて、これは地獄絵図と言えよう。

いとこ(元柔道部)に羽交い締めにされて、泣きながら暴れる遠山と、遠山に引っ付かれていていい気になっていただろう男がなんとか遠山を押さえ込んでいた。



「…あの人がお持ち帰りするって言うから、総ちゃんを呼んでん。」



和葉を頼んだで。


どうやら、悪酔いした遠山は男に執拗に絡まれた挙げ句、躍起になっていたためラブホに泊まるだのなんだのと話が進んでいたそうだ。



…確かに遠山は美人だから、誘わずとも寄ってくるよなぁ。 



見た目通り軽い遠山をとりあえず自分家に運ぶかとおんぶすると、ぎゅ、と首筋に顔を埋められた。




「おきたぁ…。」

「…なんでしょかー。酔っぱらいさん。」

「アタシ、平次にフラれてん。」




平次、可愛い彼女作ったんよ。
アタシみたいに乱暴じゃなくてうるさくない、可愛い可愛い彼女。




「…アタシ、いままで平次のなんやったんやろぉ。」

「…彼女やなかったん?」

「…どうなんやろう。確かにヤったけど…。」



どうなんやろう。
小さく呟いたまま、ぎゅ、と俺に抱きつく遠山。


しっかりおんぶしながら、しっかり歩く。

ようやくアパートについたと思い、遠山の名前を呼ぶと、それはそれはもう心地良さそうに眠っていて。




「俺が…。」



俺が、俺やったら。

遠山を、幸せに出来るだろうか。




そう思いながら遠山をベッドに運んだ。







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