from: リュウジ title: ごめん ------------ 今日、帰るの遅くなる。 先寝ててくれ。
パタリ、と先ほど受信したメールを無視するかのように私は携帯を閉じた。 私には同棲をしている恋人がいる。名前は緑川リュウジ。高校からの付き合いで、正式に交際し始めたのはちょうど3年前。
つまり、今日は交際3週年の記念日である。どうせ忘れてるだろうリュウジを驚かせる為、私は頑張って豪華な夕飯を作った。のに、あのメールである。
私は少し頬を膨らませながらボフンとソファに飛び乗った。 もういい、こうなったらリュウジが帰ってくるの待ってやる! そう思い、ぎゅっと近くにあるクッションを抱きながら張り切った。のだが、段々と眠気に誘われ、いつのまにか睡魔に負けて意識を飛ばしていた。
「…………おーい、」
「……ん…………」
「……、なまえ!」
「………ふぇ…?」
私は名前を呼ばれたのでゆっくりと瞼を開くと、そこにはリュウジの顔。……って、ええ!?
「リュ、リュウジ、いつ帰ってきたの!?」
「今、だよ。こんなところで寝てたら風邪ひくよ?」
寝るなら、ベットで寝てよね、と言うリュウジに反射的にごめん、と答えてしまう。 ……って、こんなことしてる場合じゃない!
「リュウジ、何で今日早く帰ってきてくれなかったの?!」
「いや、急に仕事が入ってさ……」
「全く、今日は何の日か、忘れたの?今日は私たちの交際3年目の―――…」
そこまで言ってピタリと気付いた。 時刻が指すは、00:17……。
過ぎていた。交際3年目の記念日が。
私は一人、項垂れていると、視界から急にリュウジが消えた。否、私は抱きしめられたのだ。
「リュウ、「ごめんな」
「本当は、もっと早く帰りたかったよ。忘れる訳もない、記念日だからね」
リュウジが耳元で囁く。覚えてて、くれたんだ…。 私は嬉しくて少し涙目になりながら抱きしめ返す。
「ところでなまえ、過ぎた今日は何の日か、わかる?」
抱きしめるのをやめ、リュウジは私の肩に手を置きながら問う。 今日って、何かあったっけ……?私は考えていると、やっぱり忘れてるな、と笑いながら、リュウジは鞄から何かをだした。
「はい、誕生日おめでとう」
そう言い、私に可愛くラッピングされた箱を渡す。 あ、私……今日、誕生日だっけ?3周年に気を取られすぎて、忘れてた…。
「ありがと、リュウジ。ねっ、開けていい?」
「ああ」
私はリュウジの許可をとり、ぺリぺリとラッピングを剥がしていく。 中に入っていたのは、ひとつの藍色の箱。 箱を開けると、私は驚きつつ、リュウジを見る。
「リュウジ、これ、」
続きを言おうとすると、唇をふさがれた。リュウジがキスしたのだ。すぅ、と唇を離し、リュウジが真正面に私を見据える。
「なあ、なまえ。お願いがあるんだ。俺って、結構弱いやつだからさ、ヒロトの秘書やってて、もしかしたら心が折れるかもしれない。だから……一生、俺のこと、支えてくれないかな?緑川なまえとして」
私は泣きながら、でも笑顔でリュウジが差し出す手を受け取った。 箱の中では、指輪が星のようにきらりと輝いた。
きらきらと綺羅星
------------ 抹茶にバニラさまに提出
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