「ん?みょーじ、まだ残ってたんだな」
「あ、霧野くん。うん、日直の仕事が残ってたからね。霧野くんは?」
「俺は教室に忘れもん」
「そっか」
他愛もない話をして、それぞれがもともとしていた作業に戻る。 私はちらりと、霧野くんを見ると、彼はどうやらシューズを忘れたようだった。 私はぐぐぐっ、と背伸びをし、黒板消しで汚い黒板を綺麗にしていく。 身長が低い私は、なんとあの倉間くんより低く(ちょっと失礼)、黒板を一番上まで掃除することがほぼ不可能。 なので、頑張って背伸びをしてるんだけど………
(とっ、届かない……!)
なかなか一番上まで届かず、足をぷるぷるとさせる。 あと5cm程度、なのに。たった5cm、されど5cm。 届きそうで届かないのが少しイライラする。
「大丈夫か?みょーじ。上のほう、俺がやろうか?」
「だっ、だいじょう………うひゃぁっ、」
大丈夫、と言おうとしたのに、足がつるっと滑ってしまう。 「危ないっ」と霧野くんの声とともに私はきゅっと目を閉じて、背中の衝撃を受けた。
「ったた………」
「だ、大丈夫……か…………?」
私は小さく目を開くと、すぐ目の前には霧野くんの整った顔。
霧野くんが私を押し倒したような体制になっていることに気付くまで、あと数秒。
その距離たったの3cm。
(ごっごめん、みょーじ!!) (だだだ、大丈夫だよ!)
------------ 蘭丸って意外にウブそう……
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