プロローグ |
「違う、よ……風介や、ヒロトたちは、間違ってる!」
「私は風介という名ではない。ガゼルだ」
どうして?
「ねえ!ヒロトからも何か言ってよ!」
「僕の名前は、グランだよ。まりんちゃん…いや、ルナ」
どうして、どうして?
どうしてみんな、間違いに気付かないの? お父様も、風介も、ヒロトも晴矢も! サッカーはこんなものに違うって、何で気づかないの?
「いやだよ、こんなことにっ…サッカーを使うだなんて、」
こわい、こわいこわいこわい! お父様がこわい。ヒロトがこわい。晴矢がこわい。風介がこわい。 みんなみんな、こわいよ。
こんなことに、サッカーを使うくらいなら――……
バンッ
「っ、此処にもいねえっ…!」
「騒々しいぞ、バーン。もう少し静かにしないか」
「ガゼルっ、仕方ないだろ!ルナがいねえんだ!」
「何っ…!?」
「今僕も探してるよ、」
「グラン…!」
「あの子、もしかしたら脱走したかもね。お金やら服やら、あの子の大切なぬいぐるみも見当たらない」
「チッ、もう少し探すぞ!ガゼルも手伝え!」
「あぁ…!」
走って、走って、走って、
鍛えたからか、脚力には自信がある私は、
とにかく走って、
研究所から出て、
また走って、走って、走って、
転んでも走って、
私、は―――……
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