部屋に入ると――、先輩がちょうど、抗議をしているところだった。
みんなフィフスセクターを恐れているのだろう。
西園くんと天馬が眉を下げながら「なんか雰囲気最悪だね……」「きっと原因は今朝のことだ、」と先輩たちには聞こえない声で話す。

「もう、行こうぜ」

一人がそういうと、次々と先輩たちは立ち上がり、出口に向かって歩き出す。


他の先輩たち――たぶん、ファーストの人達、が止めるけど、帰ろうとする先輩たちの心は一切揺るがない。

「いいのかよ、神童!」

「仕方ありません」


鼻に絆創膏を付けた先輩はキャプテンの人に言うが、冷静に返す。
本当に、この人はキャプテン?
もう少し、部員減らさないように止める努力とか、ないのだろうか。

次々に、弱気な発言が部屋中に舞う。
そんなの私には関係ない。私はここを拠点に反乱を起こす。こんな、”芯”が弱い奴なんて、どうでもいい。

――だけど、あの一言は、許せなかった。


「俺、そこまでサッカーにこだわってませんし」



なんだ、それ。なんだそれなんだそれ、なんだそれ!!意味が分からない。サッカーに、こだわってない?内申の為の、サッカー?
なんなんだ、此処の人達は。
ファーストでそんなことを思うやつがいるなんて、セカンドだったらそれが普通なのか?
内申の為だけに、サッカー部に来て、汗をかいているのか?

私は、ぐっと拳を握った。
掌に傷が出来ても、気にしない。

「水森、小坂、ありがとな」


キャプテンがそういうと、もうダメだ。とさっきまで座ってた人達まで立ちあがった。
サッカー部は、もう終わる。
ほとんどの人がそう思い、部屋を去ろうとする中―――


出口を、天馬が手を広げてふさいでいた。



「待ってください、待って!!」