「っわ、」

急に手を引かれ、驚きながら後ろを振り向くと、清志さん。何故か、不機嫌そう。え、私何かしたかな。ちょっと緑間くんと話していただけなのに。

「来い」

「え、ちょ、清志さ、」

無理やり手を引っ張られ、転びそうになるが、バランスを取りながら清志先輩についていく。「緑間くん、また後で!」と声をかけ、必死に清志さんの後を追った。





清志さんが連れてきたのは、屋上へと続く階段の踊り場。普通なら屋上へと行くだろうが、残念ながら秀徳高校は屋上を開放していない。まあ、そのおかげかここは人通りがほとんどない。修羅場などではよくつかわれる場所だったりする。

「あの、清志さん?」

「…………」

反応なし、ですか。でもその割には私、清志さんの手によって、所謂壁ドンをされているのですが。どうしよう。というか、そろそろ教室に戻らないと、昼休み終わってしまう気が。

「……オマエ、緑間と何話してたんだよ」

「え?」

突然そんなことを問われ、きょとんとする。緑間くんと、何を話していたか? なんでそんなこと聞くんだろう。

「洋楽の話ですよ。緑間くん、よく聞くみたいなので。今度CD借りようと思って」

「ふーん」

相変わらずどうでもいいような反応。でも、やはりどこか不機嫌そう。なんでだろうなあ、と考えていると、清志さんの顔が近付く。吐息が顔にかかり、心臓が跳ね上がる。

「清志、さん?」

「緑間とはあんましゃべんな」

「そ、そんなこと、言われても、」

清志さんと私の距離がとても短く、顔がどうしようもなく熱くなる。脈も勝手に早くなる。望んでいるわけでもないのに。

「あの、清志さ」

それでも緑間くんと喋れなくなるのは、なんとなく嫌だったから弁解しようとしたが、言えなかった。気付いた時には、私と清志さんとの距離はゼロ。驚いて固まっていたら、清志さんの顔は気が付くと離れていた。

「俺は案外、嫉妬ぶけーんだよ。これから気をつけろ」

そう吐き捨てると、清志さんは階段を降りて行った。私はそのまま、ぺたんとへたり込んだ。さきほど、清志さんの唇が触れた口元を指でなぞる。思い出したら恥ずかしくなって、私の頬はまた熱を帯びた。

冷めるわけのない熱

((恋の熱も、唇に帯びる熱も))



-----------
藍猫さまリクエストありがとうございました!
この宮地さんは……デレているのか……?
書き直しの要望やダメだし、持ち帰りは藍猫さまのみOKです!




back