秀徳
『さて皆さんに問題です、今日は何の日でしょう?』

私は満面の笑みでそう言った。高尾くんは目をぱちくりとさせ、緑間くんは無視、宮地先輩は「はあ?」とでも言いたそうな表情をし、木村先輩と大坪先輩は顔を見合わせている。個々の反応が面白いなぁ、と思っていると、高尾くんが閃いたようで、「あ!」と声をあげた。

「そーいや、今日バレンタインっしたね! 練習の疲れで忘れてたわ〜」

「あー、そういやそうだったな」と先輩たちも納得する。緑間くんは相変わらず無関心みたいだけど。私はとりあえず用意してあった綺麗にラッピングされたものを鞄から出した。

『とゆーわけでハッピーバレンタイン、です! 皆さんへのプレゼントですよ』

私はそう言って微笑むと、「おー、サンキュ!」と受け取ってくれる先輩方+高尾くん。緑間くんは「甘いものはあまり好まないが…仕方ないから貰ってやるのだよ」としぶしぶ受け取ってくれた。ツンデレごちそうさまです。

「中身は…クッキーか?」

『はい、バスケットボール型のと、後はみなさんそれぞれ違う形のクッキーを焼きました!』

ぜひ開けてみてください!と促すと、ラッピングをびりびりに裂いていく緑間くんと宮地先輩。豪快ですね!正直ラッピング頑張ったからちょっとショックだよ!あ、でも高尾くんと木村先輩と大坪先輩は丁寧に開けてる……。優しいですね、さすがです。

「俺のはーっと……これ、チャリアカー?」

『うん、高尾くんって、なんかチャリアカーのイメージあるし』

「俺がいつもひいてるからってことなの?そーゆーことなの、みょーじちゃん!?」

『緑間くんにはお汁粉の缶の形!』

「これは…俺の好きなメーカーのお汁粉だな。よく知っていたな、みょーじ」

「こまかっ!? 成分のトコまで丁寧に書いてある! みょーじちゃん超器用!」

『宮地先輩には木村先輩んちのトラック!』

「うおっ、すげーこまけーな」

「ちゃんと八百屋・木村って書いてあるな……。本当に芸が細かい」

『木村先輩にはパイナップルです!』

「おい宮地、お前が俺にパイナップルパイナップル言うからこんなん貰うことになったんだぞ」

「うっせー」

『大坪先輩には……大仏です』

「なんで大仏!?」

『なんとなくです、かっこわら』

「かっこわらとかつけんな!」

一通り開けてもらい、中身を確認してもらいました。それにしても、高尾くんと宮地先輩のツッコミ能力が中々高いです。将来芸人になれるかもしれません。
わらわらと一通り騒いだ後、みんな改めてこっちを向いてきた。え、私、なにかやらかしました?なんて思っていたら、全く別のことを私に告げてきた。

「クッキーありがとね、みょーじちゃん!」

「感謝くらいならしておいてやるのだよ」

「まー、形はともかく、うまそーだし、礼は言っとく」

「さんきゅーな、みょーじ」

「ありがとう、みょーじ」

それぞれお礼を告げてくれる皆さん。なんか、改めてお礼を言われると照れる。ちょっと恥ずかしくなってきた。ほっぺが熱いのはきっと気のせいではないんだろうな。

『どういたしまして、です』

えへへ、とはにかむと、皆さんは笑ってくれた。ふつーよりちょっと違うだけの日常だけど、なんだかで今日はいつもより幸せな日になりました。

『あ、ひとつ言い忘れてました』

「?」

『ホワイトデーの三倍返し、楽しみにしてますね』

「「「!?」」」

「おまっ、これが目的だったのかよ……!?」

『え、人聞き悪いですね、宮地先輩!日頃の感謝も含めてますよ! ……4割くらい』

「つまり残りの6割下心!?」

………こんなんでも、幸せな日です!

ハッピーハッピーバレンタイン!

(私、G●DIVAのチョコ食べてみたいんですよねー♪)
(みょーじ、それでは伏字の意味がないのだよ)
(真ちゃんそーゆーこと言うのやめて!?)
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