「あっつ…」

ぼそりと呟いた言葉は太陽に吸い込まれる。全く、なんでこんな暑いときに外に出なきゃいけないんだか。
アイスを食べようと思ったら切らしていてどうせだから買ってきて、とお母さんに言われたのが原因なのだが。

ぼぉっとしながら歩くと、少し聞き覚えのあるソプラノと、テノールの声が聞こえた。


(ん?……あれって、たしか黄瀬くんのトコの――)

声をした方を覗くと、黄瀬くんの中学のバスケ部マネージャーだった、かわいい子。と、なんか下衆っぽい男の人が数人。


「あの、私急いでるんで――」

「いーじゃん、少しくらい?俺らとあそぼーよ」

「絶対こっちのほうが楽しいってー」


まあなんとも定番なナンパの光景だった。てか男の人キモイ。人の話を聞こう。小学校の頃先生に教わらなかったのか。


「すみません、私、彼女に用があるので、やめてもらえませんかね」

私は見捨てるほど冷たい人間ではないので、彼女の手をとりながらそう言うと、「あ゙ぁ!?」とガン飛ばされた。まあ恐くないんだけどね。ほ、ほんのちょっと恐いとかそーゆうのはないからね。

「てか、よく見ると君も可愛いねー」

「確かに!ちょうど2:2になるし、いいんじゃない?カラオケでもなんでもいいから行こうよ!奢ってあげるって」

「いや、いいですって。遠慮しておきます。急用ですし」

私はざっくりと断る。さりげなく彼女を私の後ろに移動させながら。あーめんどくさいなあ。やんわりと断って逃げようかと思ったのになあ。さりげなーく逃げようかな。、と思っていたのだけれど、下衆な野郎共の次の言葉で私はその「さりげなく逃げる作戦」を打ち消すのであった。

「いいじゃんいいじゃん。君はあの子ほど胸大きくないけど、俺らそんなん気にしないって!!」

「そうそう!!」




ブチン。

そんな音が聞こえた気がした。

「ねえねえ、どう―――」

私は下衆な野郎共の一人が何かを言おうとしたのを遮り、蹴りをいれた。股間に。
もう一度言っておこう、男の勲章とも呼ばれるものがある、股間に。私は蹴りをいれた。

もちろん、ソイツは倒れこみ、悶えている。気持ち悪。私は彼女にボソリと「逃げるよ、」と言うと、彼女はこくりと頷き、二人で走った。


彼女と僕の逃走劇


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