「涼ちゃんっ、だーいすきだよ!」 「僕も、葵ちゃんのこと大好き!ずーっと一緒にいようね!」 「うん!!約束だよ?ぜーったいに葵の隣に居てねっ」 「もちろん!」 「ちょっとー葵起きてー」 「ぅんっ……?」 ゆさゆさと揺らされてゆっくりと瞼を開く。 ふと時計をみると今の時間は16時で、もう放課後になってしまったようだ。 「久しぶりだよね、そんなに爆睡なのは」 「ふわぁあ……そだね、昨日ちょっと夜更かししちゃったからなあ……」 欠伸をしながら答える。友達は「葵が?珍しー」と少し驚いている。私だって夜更かしくらいするさ。 「ま、帰ろうか」 「そだね………そういえば葵、」 「ん?」 「寝言か知らんけど、『りょうちゃん』って言ってたけど、誰?」 『りょうちゃん』、と言われてビクリと少し肩が揺れる。でも、顔には出さず「あんたにゃカンケーないっしょ!」と笑った。友達はそのまま気にせず「ケチくさい」と言われたけど、気にしない。 涼ちゃん――黄瀬涼太は、私の幼馴染。 親同士が仲が良くて、病院も一緒だったとか。 まあそんなこんなで小学校まで一緒だった私と彼はそこそこに仲良しだったわけで。 でも、彼は私立の帝光中?とかいうところに進学した。 (ちなみに私は近くの公立である) それからというものの、私と彼の間には距離が出来た。 ひとつは、やはり中学が違う分、関わる回数が極端に少なくなった。 中学生になると私も彼も忙しくて、会える回数なんて一カ月に一回程度。 だけど中二になってからは部活も始めたらしく、さらにあえなくなった。 もうひとつは――、彼が、変わってしまったこと。 モデルにもなり、彼との間に深く溝ができた気分になった。 どんどん輝いていく彼に、何も変わらない私。 いつからか、私は彼を『涼ちゃん』なんて呼ばず、『黄瀬くん』と呼ぶようになっていた。 ほんとうに、いつからだったんだろう。こんなに距離ができたのは。 「なーに溜息ついてんの?考え事?」 「まあねー……そんじゃ、ささっと帰りますか!」 「って、今も帰ってるし」 私はふとさっき夢で見たことを思い出した。 「ずーっと一緒にいようね!」 (嘘つき、) 私よりずっとずっと先に行ってるくせに。 ばか。 (ずっとそばにいてほしかったのに、) 君は僕の前から消えてしまった |