ゆきちゃんが残念なイケメンさんをシバいた後、私たちはお互い自己紹介をした。残念なイケメンさんは森山先輩と言って、バスケ部のスタメンらしい。すごいんだなあ。色々と残念だけど。 「え、葵ちゃんってバスケ部のマネージャーやってくれんの!?」 「はい、私でよければやらせてもらおうと思っています」 「…念願の、可愛い女子マネージャー………!」 心なしか、森山先輩の目がすごく輝いているような気がする。あはは、と苦笑いすると、ゆきちゃんが「そういえば、」と何か思い出したかのように私の方を向いた。 「どしたの、ゆきちゃん」 「お前、なんでこんなとこにいんだよ?」 「あ」 そうでした。私迷ってたんだ。迷子だったんだ。すっかり忘れてた。主に森山先輩との遭遇で。とりあえず迷っていた、と伝えると「はあ? ちゃんと校内図見ろよ」と呆れた声が返ってきました。はい、ごもっともです。でも私校内図を理解することができなかったんです。ばかな従妹でごめんねゆきちゃん。 「とりあえず、一緒に体育館まで行くか」 「うん!」 「あ、俺バッグとか教室置きっぱだったわ。取ってくるな」 そういうと、森山先輩は自分の教室へと軽く走りながら向かい、スポーツバッグなどを持って帰ってきた。 「それじゃ行くか」 ゆきちゃんがそう言い、私たちは体育館へと向かった。 「で、この道を真っ直ぐいけば体育館だ。道順覚えたか?」 「うん!ばっちり!」 私はゆきちゃんに向かってVサインする。地図はあんまり読めないけど、道順を覚えるのは得意だし! 体育館、どの辺かな、と思い、真っ直ぐに続く道の先を見たら――何故か人だかりが見えた。 「ん? なんだあの人だかり」 「なんだろーな。ハッ、まさか俺をみるためにみんな集まってくれたのか…?」 「安心しろ森山、それはない」 そんな二人の会話を聞きながら、人だかりの中心人物を見て、心臓が一瞬止まった。 左耳にだけ付けられたピアス。金に近い、黄の髪と瞳。 「…………葵、っち…?」 黄瀬涼太が、そこにいた。 (私がずっと会いたくて、) (会いたくなかった、人) (そんな彼は、私を見て) (目を見開いて驚いていた) 意外な場所での再会 |