12月。肌寒い時期である。
私は現在、何故か調理室でお菓子作りをしている。
隣には、友人の和くんこと高尾和成。

「なあ、コレ食べていい?」


本当、どうしてこうなったんだろう。




はじまりは、今日の朝のことだった。
私は教室に入るとマフラーを外し、鞄の中に入っている教科書を机の中にしまい、一息ついたところで数人の女子に囲まれていることに気付いた。え、なに、なんか私したっけ?

「ねえ、七海さん」

「は、はひっ?」

噛んだし声裏返ったし。恥ずかしい。穴があったらすごい勢いで入って埋めてもらいたい。

「お願いがあるの!」

数人の女子はパン、と手を打ってぺこりと頭を下げた。え、なに、ちょ、まだ理解できてないんだけど。

「今度、クラスでミニクリスマス会をやろうと思ってるんだけど……費用は少ない方がいいじゃない?それで、手作りにしようかと思ったんだけど……」

「私たちみーんな不器用でさ、」

「お菓子作りしてみてもなんかこげちゃったりするんだ……」

「それで、調理部の部長だった七海さんに作ってもらいたいなーって……」

「だめ、かな?」

どうやらミニクリスマス会用のお菓子を作ってくれ、ということらしい。別に私をリンチするとかそーいうのじゃなかったらしい。よかった……。

「お菓子作りなら趣味みたいなものだし、いいよ」

「本当!?ありがとう!」

「材料は先生に頼んで、調理室に置いてもらうから!」

「よろしくねー!」

そう言って彼女たちはパタパタとそれぞれ自分の席へと戻っていく。それにしても、お菓子作りか。何作ろうかなぁ。受験で忙しかったし、最近お菓子作りしてなかったし、楽しみだなぁ、と私は期待に胸をふくらませて、放課後を待った。




放課後。

予定通り私は調理室に来ている。
調理室の机の上には、お菓子作りに必要そうな材料と道具が集められていた。この材料なら、カップケーキとか、シュークリームとか色々できそうだなあ。と考えながら私はエプロンと三角巾を身につけ、早速作業に移った。




「とりあえず、こんなものかな」

一息ついて、一度椅子に座る。現在、カップケーキを冷まし、シュークリームの生地を焼いている。ちなみにカップケーキが冷めたら、チョコでデコレーションしようかな、と思っている。

「お、いいにおいしてきたなー」

「そうだねー………ってうわあ!??」

突然の声にびびり、バッと横を見ると和くんの姿。い、いつのまに……!

「ていうか、和くんなんでここにいるの?」

「なんでって……いちゃいけねえのかよ」

「そうじゃなくて!でも、もうみんな帰ってるでしょ?」

「久しぶりに部活に顔出したのー」

「ふーん、勉強しなよ」

「ちょ、それ葵もだかんな?!」

そんな他愛もない話をしていると、『チーン』というシュークリームの生地が焼けた音がした。私は鍋つかみをつかい熱い鉄板を出した。鉄板の上には焼き立てのシュークリーム(クリーム無し)。

「うはっ、超美味そう」

「まだ中に何も入ってないけどね」

「なあ、コレ食べていい? もちろんクリーム入れた後に」

「ダメ!これはミニクリスマスパーティ用なんだから」

そういうと和くんはケチーと口を尖らせた。そ、そんなかわいこぶってもダメなんだから!

「てか、葵は高校どこ受けるんだっけ?」

和くんに唐突に聞かれ、ちょっとびっくりしたけど、一拍あけて海常だよ、と言うとかなり驚かれた。な、なんで?!

「まじかよ…!海常っつーと、バスケの強豪校だぜ?!」

「えっ、あ、そういえばそうだね」

確か、従兄もバスケ部でインターハイとか行ってたような……。一回試合見に行ったけど、あれはすごかったなあ。

「じゃ、いつかお前んとこの高校と試合で当たるかもな」

「試合って…バスケの?てか、和くんはどこいくの?」

「俺はスポーツ推薦で秀徳だぜ」

「スポーツ推薦?すごいね、さすがじゃん!」

だろ?さすが俺!という自信満々に言う和くんにイラっときたのでとりあえず頭を殴っておく。

それにしても、そうか。もしかしたらゆきにぃと和くんが当たるかもしれないのか。私はゆきにぃのお手伝いとしてマネージャーをするつもりだったから、和くんに会えるかもしれないんだ。


そう思うとなんだか高校生活が楽しみになってきた。私は少しわくわくしながらお菓子作りを続けた。



(なあ葵ー、これ食べちゃ)
(だめ)
(ちぇ)

甘い放課後


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