03
「Youの進学先が決定シマシター☆」
「はい?」
シャイニーに呼ばれたと思ったら、突然そんなこと言われた。というか進学先決めたって……は?
中学卒業後の進路のこと?ちょ、ちょっと待って……
シャイニー=社長=社長の言うことは絶対
つまり、私に進学先を選ぶ権利はないと。人権のどこいった。
「Youには早乙女学園に入学してもらいマース!」
「早乙女学園って……シャイニーが学園長の、アイドルと作曲家の育成校じゃないですか。なんでわざわざそこに入らなくちゃいけないわけ?」
「んー……それはデスネー」
シャイニーが手を顎にかける。さっきまでおちゃらけていたのに、今じゃ真剣な表情。まともな理由が、あるのだろうか。
「最近、お前の歌を聴いていると『迷い』を感じる」
「迷い………?」
「あぁ。あと、嫌々やっています、という感じが出ているな」
「っ、」
シャイニーに指摘され、唇を噛み締める。
確かに私は、あのキャラを嫌々ながらやっている。でも、仕事だと割り切って本気でやっていたはずだ。あのキャラを必死に演じていたはず。でも……、それが嫌なのにやっているということが分かる人には分かってしまう。その現実を突き付けられて私は目を伏せた。
「お前は、本当は『Mari』というキャラをやりたくない。だが、あの方法でしか売りだす方法ができないと考えたお前のマネージャーは、『Mari』というキャラを無理やり演じさせた。その点については、謝ろう」
「……………いや、私が演じると決めたから。だから、それはシャイニーのせいじゃない」
私を事務所へとスカウトしたのはシャイニーではない。事務所の社員である。私の才能を見抜いたのか何なのかは知らないが、私をシャイニング事務所へとスカウトした。私はその時既に歌うことが好きだったから、アイドルをしてみたいと思い、その社員――現、私のマネージャーについて行った。
でも、シャイニーは私のことを認めなかった。だから、マネージャーは、『Mari』というキャラを作り出し、私に演じさせた。そしてそれがたまたま売れ、今じゃ爆発的人気を誇っている。
そのせいで、私は後戻りできなくなった。『Mari』ではなく、『みょうじなまえ』として売り出すことができなくなっていた。
「だが、あいつのミスは私の責任だ。だからして、お前にチャンスを与えよう」
「チャンス………?」
「あぁ、もし早乙女学園で卒業オーディションで優勝したら、『Mari』は引退し、『みょうじなまえ』として売り出す。さらに私が、積極的にお前のことを推してやろう。どうだ?」
ごくり、と唾を呑んだ。もし、私が早乙女学園に入り、卒業オーディションで優勝したら。このようなキャラをせずに、歌っていられる。私が私でいられる。こんなに良い条件はなかった。
「―――やります。私、早乙女学園に入学します」
「ふっ………いい返事だ」
シャイニーがにやり、と笑った。