01
「おはやっほー!全国のHAYATOファンのみんなぁ、元気かにゃ?今日も、第二スタジオから元気をお送りしまっす!……なーんと、今日はゲストをお呼びしてまーす!Mariちゃん、おいでおいでー!」
「はぁいっ♪音楽の星からきた、うたのお姫様、Mariでっす☆」
「というわけで、今日のゲストはMariちゃんだにゃ!みんな拍手拍手〜」
「えへへっ、いつも応援ありがとねぇ!ファンのみんなぁ、大好きだよぉ?」
「Mariちゃんはサービス精神がすごいね!でも僕も負けないよー?」
「HAYATOくんもファンの人たちににたっぷりサービスしてるもんねぇ」
「ふふんっ、そうなんだよね!ではでは、そろそろ今日のテーマを!今日のテーマは、「歌」!Mariちゃんは、歌も上手だよね〜」
「そんなことないですよぉ。でも、お歌を歌うときは、故郷のおんぷの妖精さんを思い出してるんだぁ」
「へぇー!だからあんなに歌が上手いのかにゃ?」
「おんぷの妖精さんから力を分けてもらってるのかも!でもHAYATOくんもお歌上手だよねぇ?」
「そうかにゃ?Mariちゃんに言われるとすごく嬉しいよ!」
「私はいつもHAYATOくんのこと尊敬してるよぉ」
「な、なんだか照れちゃうにゃ……、ではではCMのあとは、Mariちゃんに歌ってもらいまっす☆」
「頑張るよぉ♪」
「はいカットー」
監督の声が聞こえて、ふぅ、と力を抜いた。
やはり生放送の番組というのは緊張する。
私は、「Mari」というキャラを演じている。あくまで「演じている」ので、私自身ではないから、あまりボロを出すということはないと思う。もしいつもの私が出たとしても、「今撮影してるドラマの癖が出ちゃった☆てへぺろ☆」みたいな感じで乗りきっている。そのうえ、スタッフがそこの素を出してしまったシーンを大抵カットしてくれたので大丈夫なのだが、生放送だとそうは行かない。だから私は、生放送のときはいつも以上に力を入れているのだ。そのぶん、かなり疲れるけど。
「Mariちゃん、こっちの歌用のステージに移動してー」
「はぁいっ」
スタッフに呼ばれ、いつも通り、「Mari」を演じる。このあとは、歌を歌う。歌っている時が、仕事の中で一番楽しい。歌っている時だけが、みょうじなまえとしての自分も、Mariとしての自分も忘れられる気がするから。
「CM終了5秒前ー!」
監督が、そういって、手で3、2、1と示す。CMが終わったと同時に私のデビュー曲のイントロが流れる。そして、いつも通りのタイミングで歌い始めた。
私はなんだかんだで、歌うためにアイドルをしてるのかもしれない。