「今日って僕の誕生日なんだよ〜☆」

渡狸と一緒にロビーにきた夏目は、突然みんなに聞こえるくらいの声で言った。
……ちょっと待て、誕生、日?

「ほらよ、残夏。これやるよ」

「これ…お菓子の詰め合わせ……誕生日プレゼント……」

「わ〜ありがとうカルタたん!渡狸がくれるなんて意外ー」

「つんつんすんな!」

渡狸とカルタちゃんが夏目にそれぞれプレゼントを渡す。


「き、昨日たまたま買いものに出かけたときに思い出したから、買っておいたから、受け取れ。ほ、ほんとにたまたまだからな!」

「夏目さま、お誕生日おめでとうございます。つまらないものですが、よかったらどうぞ」

「ちよたん、そーたん、ありがとー☆」

凜々蝶ちゃんと御狐神も、続けて誕生日プレゼントを渡していく。
ちょ、ちょっと待って。渡狸やカルタちゃんが誕生日知ってるのは分かるけど……凜々蝶ちゃんも御狐神も知っているなんて。


「俺らからはこれな〜、野ばらちゃんと合同プレゼントだから」

「私は別にあげたくなかったのに………」

「わーレンレンも野ばらちゃんもありがとねー」

ま、まさかの反ノ塚と野ばらちゃんも用意してるの……!?
もしかして誕生日知らなかったの、私だけ……!?
さーっと青くなる顔を隠すため、私はこっそりとロビーを抜け出して自室へ戻った。


「うううう……、どうしよう」

やはり、好きな人の誕生日だ。何かあげたい。でも外に出るならロビー通らなくちゃいけないから、明らかに用意していませんでした。と言っているようなものだ。それだけは嫌だ。
だったら、この場で用意できるものにするか?でもこの場で用意できるものと言ったら、料理くらいだろう。生憎私は器用ではないので、上手く作れる自信がない。

はぁ、と溜息をつくとピンポーンと無機質な電子音が鳴った。

はーい、と軽く返事をしながらパタパタと玄関まで行くと、

「やっほー☆なまえたん♪」

絶賛悩んでいる原因が、そこにいた。



「なななな、なんで夏目がここにいるの?」

「えー?いちゃいけないのー?お兄さん、悲しい………」

パッ、とあたりが暗くなり、夏目にスポットライトが当たる。夏目は白いハンカチで涙を拭いていた。どうやってこんな漫画みたいなことを…!?

「わ、わかった!いてもいいから!」

「じゃ、お邪魔しま〜す☆」

立ち直り早っ!?と思っている間に、ずいずいと部屋に入ってくる夏目。ていうか、何しに来たんだ……?


「ところでさ〜、なまえたんからのプレゼントってないの?」

どっきーん、と心臓が高鳴る。「やだ、これって恋…!?」みたいな感じのときめきじゃなくて、焦りの高鳴りである。やばいやばい用意してないってばれた!?みたいな感じである。

「あ、はは……」

「もしかして用意してないの〜?」

あ、ばれたな。確実に。そう思うとなんだか視界が滲んだ。

「え、な、なんで泣いてるの!?よしよーし」

「うぅ………」

どうやら私は泣いているらしい。夏目に慰められる。撫でるのはいいけど、ちょっと強引です。地味に痛い。

「夏目のばか…………」

「え〜泣いてるのに罵られたんだけど〜…どういうこと〜……」

「だって、わたし、誕生日しらなかったもん……。どーせプレゼントなんて用意してないもん……。ばかー…」

ひぐひぐと泣きながら言葉を紡ぐ。

「そんなに思いつめなくてよかったのに〜…」

ぽんぽん、と頭を今度は優しく撫でてくれた。なんだかんだで優しい。だから私は夏目を好きになったのかな。

「あ!じゃあなまえたんにしかできない、僕へのプレゼント思いついちゃった☆」

「え、それ自分で言うの?」

少し涙が収まってきたころに、突然夏目が提案した。

「うん♪あのねー、なまえたん……僕と付き合っちゃおうよ☆」

「…………………………はい?」

突然理解できない言葉が振ってきた。え、え、付き合う?え、え、
脳の処理が追いつかない。

「だからー、なまえたんって僕のことが好きでしょ?僕も好きだからさっ、付き合えたらこの上ない嬉しいプレゼントだからねっ♪」

え、ちょ、え、
確かに私は夏目のこと好きだけど……うぇえええ?!
なんで知って……というか、僕も好きって、ちょ、まっ、

「知ってるも何も、僕のチカラの前じゃ、心の中丸見えだよ?」

「……そういえば、百目だっけか………」

え、じゃ、なに?今まで何気ないしぐさにときめいたり、やっぱかっこいいなあとか思ったりしてたのもお見通しだったってこと?なにそれ恥ずい。しにたい。

「それでさ、返事はどうなの?いえす、おあ、のー?」

棒読みすぎでしょ、とは口に出さず、顔を真っ赤にしながら「いえす、」と呟いた。それを聞いた夏目は「りんごみたいだよ」と笑った。


りんご


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残夏お兄さん誕生日おめでとう!!
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