「別れよっか、私たち」
もう、無理だよ。
そう言って無理矢理笑った私に、和成は、ただただ苦しげで、切なげで。静かに頷いて。
こうして、私たちの関係は、ただの部員とマネージャーへと降格した。
「みょーじ」
「あれ、緑間くん。どうしたの? 居残りの許可、まだ貰ってなかった?」
「いや、それはもう貰った。高尾のことなのだが」
ズキン。胸の奥が小さく傷む。
「"高尾くん"が、どうかしたの?」
もう、和成なんて呼んじゃいけない。だって、もう、ただの部員とマネージャーなんだもの。たいして特別な関係でもないのだから。
「……お前たち、別れたのか?」
「……わお。直球だね」
あまりにも直球で、正直ビビった。緑間くんがこんなにもストレートでデリカシーがないとは思わなかったよ。
「……うん、そうだよ。それがどうかしたの?」
「高尾の様子がおかしかったからな」
「え、高尾くん、が?」
ああ、と今日の和成……高尾くんの様子を教えてくれる緑間くん。
今日の高尾くんは、授業中ぼーっとしてたり、昼食もいつもの半分しか食べなかったりと、何かおかしかったらしい。最終的には部活にまで支障が出て、パスミスをしたりして、監督に外周を命令されたらしい。
私は今日、二軍を中心に見ていたのでそのようなことがあったなど知らなかった。
「何故、お前はアイツと別れたのだよ。アイツには……お前が必要なのだと、俺は思う」
「それは、無理……だよ」
和成に、高尾くんに、私は必要ない。むしろ、お荷物になってしまっている。
「ダメなんだよ、私じゃ」
私では、高尾くんを支えられない。高尾くんをサポートできない。どうしようもなく悔しいけれど、事実だから。
「それに、こんくらい乗り越えられなきゃ、秀徳レギュラーの名が廃っちゃうよ」
自嘲気味に私は笑った。
高尾くんが大切だからこそ、私は彼から離れる。大好きだけど、ずっと一緒にいたいけれど。彼の迷惑になるなら、彼のお荷物になるのなら。私は、彼と距離を置くんだ。
愛情の裏返し