「「「ハッピーバースデー!」」」
笑顔で声を揃えて、三人――来栖翔、四ノ宮那月、みょーじなまえは言った。ボクがぽかん、としていると、「今日、お前の誕生日だろ?」とショウが補足した。ああ、そういえば、そうだったな。正直、ボクはロボットだから、あまりそういうことに実感は湧かない。でも、前に博士が人間にとって、誕生日はとても大切な日だと言っていたな。まあ、そのことを理解するのはまだ無理だけどね。
「……おい、藍、なんか反応薄くね?」
「そう? 十分驚いているけれど」
「あんまりそうには見えないけどなあ………」
なまえの言葉に、ナツキがですねぇ、と肯定した。まあ、確かに驚きはしたけれど、嬉しいとかそういう感情は持ち合わせていないしね。
ふとショウの方を見ると後ろから何か取り出していた。なんだろう、と思った瞬間、その“何か”はボクに差し出された。
「ほい!」
「は? なに、急に差し出して」
「プレゼントだよ! 見てわかんねーの?」
ショウに渡されたものをよく見ると、綺麗にラッピングに包まれていた。ファンからのプレゼントはよく貰うけど、身内からこうやって直接渡されるプレゼントは初めてだ。
「僕と翔ちゃんからのプレゼントですよぉ」
「腕時計なら、常に身につけられて使いやすいだろ? お前時計に細かいしな」
「ふーん………ま、ありがとね」
ぶっちゃけ、体内に時計は内蔵されているんだけど。まあ、たまにはいいのかもしれないな。人間らしくて。
「それより、ショウとナツキ、これから収録なんじゃないの?」
「あ、やべ! いくぞ、那月!」
「あ、はい!」
ショウとナツキはばたばたと準備して寮から飛び出して行った。ああ、やっとうるさいのが出て行った。と、思ったけど、まだ一人いたことを思い出した。
「で、君はまだ帰らないの?」
「えー? だってまだあいちゃんにプレゼント渡してないし?」
はあ?と答えると、じゃじゃーん、と効果音と共に取り出したのは小さな箱。これまた綺麗にラッピングされており、プレゼントらしい。
「はい! 改めておめでとー!」
ふうん、と言うと、開けてみて!と嬉しそうに笑うなまえ。なんでキミが嬉しそうに笑うのさ、と思いつつ開封。
「……ナニコレ」
「博士に特注で作ってもらったの。緊急充電器だよん」
コンパクトで持ち運びに便利!と胸を張るなまえ。てか、それなまえが作ったわけじゃないのに、なんで胸張るんだろ。
「ま、ありがと」
「どーいたしまして!」
えへへ、とはにかむなまえ。それを見ていたら、不思議な感覚に陥った。
心臓がきゅうっと掴まれたような、脈が早くなるような。
おかしいね、ボクには心臓も脈もないのに。
ボクは自嘲気味に笑ったら、なまえは首を傾げた。
不可解な片想い
(ボクはまだ、その時の感情は知らない)