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「お、お兄ちゃ……」
ぶわりと視界が歪む。
剣城なまえ。
最大のピンチです。
ことの始まりはお母さんだった。たまたま、お兄ちゃんが筆箱を家に忘れてしまったのに気づいたお母さんは私におつかいを頼んだのだ。
私だって、もうすぐ小学生です。
頑張ります!
と意気込んだものの、道に迷ってしまいました。
あぅあぅと道をさまよいながら雷門中を探していたら…
「ねぇ、」
声をかけられてしまいました。
「きみ、どうしたの?迷子?」
私は知らない女の人に声をかけられてまた泣きそうになってました。
でも、ここで雷門中に行きたいと言えばつれてってくれるかも。
そう思った私は女の人を怖がらず、信じて言ってみることにしました。
「あ、あの…わ、たし、雷門中、に、いきた、くて、」
所々つまづきなからいうとそうなの?!と驚きの声をあげる女の人。
「私も今から行くところなの。一緒に行こう?」
ぱあぁ、と私の表情は明るくなりました。はいっ、と元気な声をあげて、私は女の人と手を繋ぎ、雷門中に向かいました。
「ここが雷門中だよ」
そういう女の人――葵さん、と言うらしい―の声を聞かずただただ呆然としました。
雷門中ってこんなに大きいんですね。なまえ、びっくりしました。
「それで、なまえちゃんはどこに行くの?」
「あっ、はい!お兄ちゃんに筆箱を届けに来たんですけど……お兄ちゃん、たぶんまだ朝練だと思うんです」
ショボーンとした顔をすると、お兄さんの部活はどこ?と聞かれたのでサッカー部です!と答えた。
「サッカー部なら、私が今から行くところだし、一緒に行って、探そうか」
「…!はいっ!」
というわけで、そのまま二人で手を繋いでサッカー部を目指すことにしました。
「こんにちはー、遅れてすみません…」
「あ、葵!おはようっ!!…………その子は?」
「はっ、はうぅ……!」
サッカー部の部室?みたいなところに入ったのはいいんですけど……、ちょ、チョココロネみたいな男の人に話しかけられました……ふぇ。
こ、恐いです……!
「サッカー部の誰かの妹みたいなの。誰か分かる?」
「うーん、わからないなあ……」
信介は分かる?、とチョココロネさんはピカ●ュウみたいな人に問いかけたけど、ピ●チュウの人も分からないようで首を振っていた。
お、お兄ちゃんどこだろう…。
キョロキョロとしていると、見慣れた人物を見つけて葵さんの手を振り払い、猛スピードで近づいていく。
なまえちゃん!?、という葵さんの声が聞こえたが今は無視だ。
そして、見慣れた人物――お兄ちゃんに、ぎゅっと抱きついた。
「お兄ちゃんっ!!」
「おまっ………なまえ、なんでこんなところに……?!」
抱きついたらお兄ちゃんに驚かれた。まあ、びっくりするよね。
と思ったら、葵さんとチョココロネさん、●カチュウさんの目が点になっていた。
どうかしたのかな……?
「「「おっ、お兄ちゃんっ……!?」」」
「…?はい、私のお兄ちゃんですよ?私は剣城京介の妹なんです!」
「「「………ええええええええええええええええ!?」」」3人の声が、サッカー棟に鳴り響いた。
泣き虫な妹ちゃん