大好きな、人が居る。 結構歳の離れた人で、優しくて、暖かい、そんな人。 いつでも話したり、バカ…したりし合う、そんな仲で。 くだらない関係が続くといいねー、なんて笑って言っていた彼の言葉は、ぐさりと刺さった。 でも、それでいいんだ。だから、私も。 「…隠したのに」 その声に呼ばれるたび、肩を叩かれるたび、優しくされるたび、笑いかけられるたび、私は胸を高鳴らせていた。 「そんなに好きなら言えばいいのに」 「簡単に言わないでよ…」 「うーん」 「諦めた方が良いと思いますよ。貴女も、彼もアイドルです。その自覚を持って…」 「仕方がないじゃない…」 好きに、なっちゃったんだ。 相談を聞いてくれていた音也とトキヤは、顔を見合わせて曖昧に笑った。 隠しても意味の無い気持ち。 避けてみても、私の心情を知らない彼は声をかける。 ほんっと、ばか、おおばか。 「優しくて、ずるいよ…」 はあ、と溜息をついて、テーブルに突っ伏す。 「末期、だね…」 「そうですね」 「どうしたらいいんだろう、トキヤ」 「私達に出来ることなんてありませんよ。」 「だよね…」 二人にも溜息をつかれ、どうして良いかわからなくなる。 ときめきの条件、詳細はない、と思う。 ただ、ときめいてしまったのだ。 「……」 テレビを付けたら、丁度彼が、寿嶺二さんが出ている番組で。 ついつい、目で追ってしまって。 ああ、もう、なんで。 「何で、嶺二さんなのかな…」 テレビの向こうで笑う嶺二さんい、胸が躍って。 彼のちょっとした一言で。びっくりしたり、どきどきしたり。 毎日、心臓がもたない。 「ありえないでしょ」 テレビはそのままに、再び突っ伏して、彼の声を聞きながら目を閉じる。 冗談じみてて、でも、やっぱりいつでも本気な彼。 「ううううう」 「大丈夫?」 「ぬううううう」 「大丈夫、じゃ、なさそうですね」 ああ、頭抱えたい。 ほんと、なんであの人好きになっちゃったの。 ああ、苦しい。 「別の人好きになれば、こんな…」 「え、なまえちゃん好きな人いたの?!」 「は、」 聞き覚えのある声に、思わず顔を上げると、なんとも言えない表情の嶺二さんが立っていた。 は、どゆこと。音也達どこ行ったの。 「嶺二、さん?」 「さっきの質問!」 「え?」 「好きな人って」 「え、あ、まあ」 いますよ、目の前に。 なんて言えるはずもなく、とりあえず頷くだけ頷くと、また、なんとも言えない表情になって。 切ない顔、っていうのかな。そんな感じ。 え、ちょっと、なにそんな顔してるんですか。 「…そっかあ…なまえちゃん好きな人いるんだ…」 「え、あ、まあ」 「…じゃあ、とりあえずうん。だめもとでも言っとくべきだよね、うん」 「は?」 「なまえちゃん」 「は、はい」 真剣な目で、私を見る彼に、自然と背筋が伸びた。 今から言うこと、気にしなくていいから、なんて言いながら、息を吸って、吐いてを繰り返す。 5秒後、彼の口から紡がれた言葉に、驚いて、でも、嬉しくなって、笑った。 君の、冗談な本気 (問題点とか、探しても無い。君が、いいから) ← top → |