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今年は7月に入っても気温が安定せず―――とテレビの向こうの天気予報士がはっきりとした口調で言っているのを横目に見ながら、隣で食べ終わったアイスの棒をゴミ箱へ投げ入れて、ベッドへもたれて雑誌を読んでいる南沢さんの様子を伺う。外は曇ってはいるものの気温が高く、南沢さんもよくこんな中俺の家に来ようと思ったな、と口に出さないで思う。床に転がった2人で食べきったアイスの箱を足でいじりながら俺には理解できない難しいニュースを眺める。

「倉間、外行くぞ」
「はい?なんで」
「アイス買いに行く」

ダルそうに立ち上がりながら雑誌を元あった場所に戻す南沢さんの視線がこっちに戻ってくるのを見計らって、俺もゆっくりと立ち上がる。俺と南沢さん以外誰もいない家の中で静かにする必要もなく、騒がしく階段を降りて既に靴を履き始めている南沢さんの横でサンダルを履く。ドアを開けながら自然に差し出された南沢さんの右手を握らない理由はなくて、左手で少し強めに握った。

「暑い」
「そうですね」
「暑い」
「2回も言わないでくださいよ、暑いから」

じんわりと腕に流れる汗は拭う事なくアスファルトへ落ちていく、手の平だってもう汗でべと付いているけど離そうとは思わない。ゆるい坂道を降りて信号を渡るとやっとコンビニが見えてきて、自動ドアが開くのと同時に冷気が体に当たる。さっきまで流れていた汗もいつの間にかなくなり、手早くアイスを2箱もった南沢さんが会計を済ませるのを横で見ていた。ここで金を払うのが礼儀なんだろうけど、生憎部屋に財布を置いてきたから後で払う事にした。

「1本ずつ食うか」
「そうしますか」
「暑いし」
「あ、また言った」

笑いながら渡されたチョコ味のアイスを右手に持って口に運ぶと、口の中が一気に冷える。坂道をのぼる途中で食べ終わってしまったアイスの棒を口にくわえながら南沢さんの方を見ると、同じようにアイスの棒をくわえていて、再びべと付き始めた手をもう一度握り返した。

恋愛光線



椎名様へ 相互記念

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