present | ナノ


外で鳴く鳥の声に起こされていつもより少し早い時間に起きてしまい、上半身だけ起こして伸びをする。外には雲1つなく、真っ青な空が広がっていて、久々に散歩でもしようかと手早く着替えて外に出る。朝の空気を吸い込みながら軽い足取りで歩いていると、見覚えのある銀髪が高い位置で揺れて空と一緒に視界に写る。

「おはよーさん」
「あ、おはようございます」

軽い口調で発せられた挨拶に一応、と頭を下げて挨拶をするとくしゃりと髪をかき混ぜられる。これだけで赤くなってしまう自分も十分単純なんだろうけど、幸せそうに微笑む市丸隊長も単純なんじゃないかと思う。これ以上この人と一緒にいたら心臓がいくつあっても足りない、とどこかの漫画のような言葉を頭の中に浮かべながら失礼します、と横を足早に通り過ぎようとすると、右腕を引かれて後ろに戻される。

「あの、隊長?」
「これから用事とかある?」
「ないですけど...」
「そっか。じゃあボクとの約束で埋めてもええ?」

それは構いませんけど、と呟くと今まで右腕を掴んでいた市丸隊長の手は私の右手へと移動して、そのまま私が来た道をそのまま引きずられる。身長差はすごくあるはずなのに歩幅は私に合わせてあって、自惚れだとしても嬉しくて頬が緩む。繋がれた右手を見ながら市丸隊長に半分引きずられて歩いていくと、急に止まった市丸隊長の背中に額が当たる。

「っわ、すみません」
「ええよ。それに、着いた」
「え?」

言われて市丸隊長の左横に立つと、いつの間にか丘の上に来ていたようで建物が小さく見える景色はきらきらと輝く朝の光に反射して綺麗。しばらく見とれていると右側から小さく笑い声が聞こえて急いで横を見ると、市丸隊長が肩を揺らして笑っていた。

「な、なに笑ってるんですか」
「いやーそないに可愛い反応してもらえると考えたかいあったわ」
「なんで急にこんな...」
「え?だって君今日誕生日やろ」

そういえば、言われてみれば。もうここに来てしまったんだから誕生日なんて関係ないと思っていたけど、祝ってもらえる事は素直に嬉しい。おっきいやろ、ボクのプレゼント、と丘の下を指さしながら笑う市丸隊長につられて笑ってみると、また髪をかき混ぜられた。

世界で一番愛の大きな君に



2012.07.03 とうふ Happy Birthday!!

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