部活終了後、練習前に購買で買ってきたパックの牛乳をまだ当分叶いそうにない願いをこめて飲み干す。ぼこ、という音を鳴らしながらパックが潰れると共に、浜野が髪をゆらゆらと揺らしながら口を開く。 「ちゅーか、牛乳飲んでも身長伸びないっしょ」 「だめですよ浜野君、倉間君だって頑張ってるんですから」 「なんだよ頑張ってるって!別に身長のためじゃねぇよ!」 速水の無駄なフォローに噛み付きながら、空になったパックを再び膨らませてベンチの上に置く。後輩に身長が負けたからといって牛乳を飲んでるわけではない、決して。ただ、その後輩が恋人といった形で隣にいる事。好きな人だったらやっぱり身長は抜かしたいという願望はある、はず。 「んじゃ、俺ら帰るなー」 「おー、じゃあな」 ひらひらと手を振り返すとぱたん、と静かにドアが閉められる。1人残った俺は牛乳パックと向き合いながらその後輩を待つ。 「どうやったら伸びるんだろうなー」 指でパックを弾くとぱこん、と軽い音と共に地面に落下した。 「牛乳に相談、ですか」 「は、」 音もなく開かれたドアにもたれ掛かっていたのは後輩兼恋人。 「遅くなりました」 「待たせすぎだろ」 職員室に呼び出されていたらしい剣城は、俺が弾いたパックを拾い上げると部室のゴミ箱に投げ入れる。 「帰りますか、先輩」 「おー...帰る以外になんかあんの?連れてってくれるとか」 別れを惜しむような顔で見られて冗談まじりにそう言うと、いいですよ、なんて全ての勇気を振り絞ったような赤い顔で応えられてつられてこっちまで顔が火照り、それを隠すように剣城の手をとって歩き出す。 凸凹 back |