short | ナノ


久々に会えると思って期待してたのに、連れてこられた先はアイスだけが広がる涼しい店内。最初は文句を言ってみたが、硝子の向こうに写るアイスはカラフルで何故か目が離せない。

「青峰っちどれにするんスか」
「あー、これ」

硝子から目を離して尋ねれば、指差された先にはチョコレートミント。青峰っちの答えを聞いて硝子の向こうを見ると、更に迷う。俺が迷っている間に店員に注文し始めた青峰っちの横から追加する。

「払えよモデル」
「嫌っスよー」

毎回繰り返すこの会話も久々すぎて頬が緩む。店員が笑顔で差し出してくるアイスを2つ受け取り、いつの間にか座っている青峰っちに手渡す。刺さっているスプーンを抜いてそのままかじり付く青峰っちを数秒見てから、チョコレートミントに似た何かをどこかで見たような気がして考えると、目線を少しあげた事で答えに辿り着いた。

「なんか、青峰っちみたいっスね」
「あぁ?何がだよ」
「チョコレートミントっスよ。髪の色と肌の色がそっくり」
「じゃあお前はレモンシャーベットか」

そうっスね、と笑いながらスプーンでアイスを一口すくって口に入れる。冷たいものはすぐに消えてなくなり、もう一口食べようとスプーンを刺すとコーンごと伸びてきた褐色に奪われる。既にチョコレートミントは無くなっているようで、テーブルの上にはスプーンと紙だけが置かれている。

「青峰っち!」
「ちまちま食ってんじゃねぇよ」
「味わってるんスよ!」

一口、二口と青峰っちの口に運ばれる俺のアイスは、どんどん減っていく。せめてスプーンで食べればそんなに減らないのに。あーあー、と声をあげているうちにコーンも無くなっていって、最後の一口も青峰っちの口へ吸い込まれていった。

「あー!もう、なんで食べちゃうんスかー」
「お前が止めないのが悪いんだろ」
「酷いっスよー」

わざと音を立ててテーブルに突っ伏すると、前の椅子が動かされる音がする。聞き慣れた低音と高音が会話しているのは聞こえるけど何を話しているのかまでは分からず、そろりと顔をあげると目の前に差し出された水色と茶色。

「な、スかこれ」
「あ?いらねぇなら俺が食う」
「わー、食べるっスよ!」

引っ込まれそうになったチョコレートミントを慌てて奪って、スプーンで一口すくう。口に入れたそれが溶けて、もう一口食べようとスプーンを刺したところで再び褐色が伸びてくる。

奪われるまであと3秒




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