霧野先輩の声、耳障り。 「神童神童って、うるさいな」 心の中で思っていた事がそのまま、口をついて出てくる。俺とは練習する時も、帰る時も、休みの日だって一緒にいる。なのに、霧野先輩はいつだって神童先輩の事ばっか。一緒にいる時間が長いのは俺なのに、霧野先輩と付き合ってるのは俺なのに。 * 「霧野先輩、帰りましょうか」 ちょうど着替え終わった先輩に声をかけると、霧野先輩は笑顔であぁ、なんて返事をする。帰り道、他愛のない話をしてても必ず神童先輩の話が入ってくる。そうなんですか、なんて興味なさげに返事をしても話は続くだけ、笑顔をこっちに向けてても気持ちは神童先輩に向いてるのがわかる。 ちゃんとこっち向いてよ先輩。そう思いながら霧野先輩の制服の襟を掴んで顔を引き寄せる。ちゅ、なんて自分らしくないななんて思いながら霧野先輩を見ると、 「してくれたな、」 なんて苦笑い。あぁまたその笑顔。 「かわいくないですね、霧野先輩」 嫌味で言ったのに霧野先輩には通じないまま2度目のリップ音。近くで見る先輩の顔はやっぱり憎らしいほど整っている。 「かわいいなんて言われるのも嫌だけどな」 「まぁ...先輩も一応男ですもんね」 いつも通りの嫌味を込めた言葉で赤くなった顔を隠す。でもほら、キャプテンの話、しなくなった。 電波ジャック back |