short | ナノ


ちょうど冷え込んできた冬の部活帰り。帰り道で俺が寒い寒いと連呼していたせいか、南沢さんの家に寄ることになった、―――のは30分前の事、

しん、と静まり返った部屋でベッドにもたれかかってぼーっとしているだけ。ほとんど毎日来ているせいか、なんか無言でもいいような気がしてきた。

南沢さんも飽きてきたのか指で遊んでいる。妙に真剣に指で遊ぶ南沢さんを見ながら、笑いをこらえるために南沢さんの肩にもたれかかる。

「…なにしてんの、お前」
「別に..南沢さん子供っぽいなーって思っただけですけど」
「俺がいつ子供っぽい言動をした」

ちょっと怒ってる南沢さんに対して今です、とは言えなくてさっきまで遊ばれていた指に目をやる。俺より大きい手のひら、細く長い指―――綺麗。しばらく見とれていると、その指が形を変える。

「はい、これはなんでしょう」
「キツネでしょ、それくらいわかりますけど」

言葉を紡ぎながら南沢さんの方を向くと唇に何かが当たる。俺の唇に当たったのは唇じゃない…指。
やっと状況を理解して口を離すと、くすくすと笑う南沢さんが口角をあげて口を開く。

奪っちゃった

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