short | ナノ


誰にもバレないと思っていた部室裏に足音が近付いてきて、目の前で止まる。「...なに、剣城君」「なんでもない」「そ。」真っ赤になった目を必死にこすって顔をあげる。いつもより会話が続かないのは私が話を続けないからかもしれない。剣城君は元々よく喋る人じゃないもんね。座り込んでいる私の前に止まっていた剣城君の足は音を立てて少し動いた。やっと戻ってくれる、そう思った。「なにしてるの」「ん」私の前に突き出された剣城君の細い2本の腕は私を助けてくれるように感じた。考えれば考えるほど止めていた涙が溢れ出てくる。「...、」「気が済むまで泣け」「う、ん」剣城君の肩は私とは違って骨張っていたけれど、妙に安心したのは温かい体温のおかげかな。

2人で抱えれば半分になるはず




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