short | ナノ


少しずつ散っていく桜吹雪の中に、今にも桜と一緒に消えてしまいそうなピンク色の髪が目に映る。ゆらゆらと揺れるツインテールに近付いて軽く息を吐く。「霧野先輩」「おう、狩屋」顔とは正反対に歯を見せて笑う姿は転校してきてから何度も見てきたけど、今日はなんだか、いつまでもその笑顔を見ていたかった。「何見とれてるんだ」「別に見とれてません」「そ。あ、狩屋これやるよ」あぁはいはい、なんて言いいながら差し出した手のひらに置かれたのは第二ボタン。「これ好きな人にあげるやつですよ」「うん、合ってるじゃん」散っていく桜を背景に、綺麗に笑う霧野先輩の姿は3年になった今でも瞼の裏に焼き付いて離れない。

あと少しで君の所


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