short | ナノ


「霧野君」「いっ、た」急に手を引かれて何かと思えば、そのまま山菜の細い指についている長い爪が俺の左薬指の根元に食い込む。手元に目をやるとじんわりと血が滲んでいた。「私の事見て」「見てる」「見てないよ」顔をあげて視界にははっきりと山菜の顔が写っているのに、山菜は首を振って俺の言葉を否定する。「霧野君は私の目しか見てない」「なに、が」「いいえ...私の目の写っているシン様しか見てない」更に爪が食い込むのは今度は俺の指ではなく、山菜の左薬指の根元だった。「ほら、お揃い、ね?」「あ、あぁ...」にっこりと微笑む山菜の目には俺の桃色の髪ではなく、俺とは正反対のゆるくウェーブのかかった茶色の髪が写った。

だって君が見てる




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