君がいい




世はバレンタインデー、バレンタインデーなんか製菓会社の作ったもので、臨也にとっては面倒くさいものでしかない。人前では人を演じる臨也は容姿もあいまって女子に人気があり、毎年大量のチョコレートが贈られる。静雄と違って甘いものが苦手な臨也はチョコレートなんてたくさんもらっても困るのだ。静雄もあの性格のため手渡しの人はほとんどいないが、静雄が席を立った隙にいつの間にやら毎年たくさんのチョコが詰め込まれていた。
「大量じゃないか」
「…お前もな」
詰め込まれているチョコたちを一つ一つ取りだす静雄は悪態をつきつつも、満更でもないようだった。――気にくわない。一応恋人同士だというのに他のひとからもらったものを嬉々として口に放っていく静雄を見て、臨也は珍しく顰めっ面を作りチョコを奪い取った。
「なんだよ、お前ももらってんだろ」
珍しく顰めっ面をする臨也に、静雄は眉を潜め、返せと手を差し出す。反応しない臨也を咎めようと口を開けばその口は彼の口によって塞がれてしまった。
「俺はシズちゃんだけでいい」
彼は耳元でそう言った。



遅すぎたバレンタイン話
(2012/04/14)



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