アジア支部の中はとても広い。本部よりも広いと言うのだから驚きだ。本部でさえ広いのにあれより大きいというなら相当広いのだろう。自分は元々方向音痴なのでしょうがないと自分で勝手に思っているが、フォーの言った通り、慣れるまでは迷う人も少なくないはずだ。最近入ったティモシーやチャオジーはファインダーの人たちとよく居るから迷ったりとかいうことは少ないのかもしれないけど。

「まさか自室がわかんなくなるなんてなぁ…」

ティムキャンピーは最近クロス元帥に引っ付いていて気が向いたらアレンの所にやって来るような感じだったのでティムにも頼れないし、アジア支部専属エクソシストではないのでアジア支部の中の構造やらなんやらも何もわからない。下手に変なところに行ってバクやフォーに怒られるのも嫌だし。今居る場所は人通りがやけに少ないのでもしかしたらもう変なところに居るのかも、なんて思いフォーに殴られるのを想像して背筋がぞわっとした。

「どうしよう…」

あんまり動き回って余計に危ない場所に行くのも危険かと思い取りあえず端に寄って座っておく。さあどうしよう。誰も来なかったら、

「お腹減って死ぬかも…」

「こんなときにも飯のこと考えてんのなー、アレン」

「ラビ!?」

予想外の人の声に勢いよく顔を上げすぎたせいか、後ろの壁にがつんと音がするぐらい頭をぶつけてしまった。ラビはそれに盛大に吹き出したがそれに怒るほどの余裕が今はなかった。

「はー、こんなとこでなにやってんさ?」

ぶつけたところを優しく撫でてくれる、それだけで胸がドキドキと高鳴り出す。そう、自分はラビが好きだ。いつからこんなこと思うようになったかなんて覚えていないから、いつの間にか惹かれていた、というのが一番正しい答えだ。それに気づいてからというもの、今まで合わせられた目も合わせられなくなってしまったし、後ろからいきなり声をかけられたりするのにいちいち動揺してしまったりとラビを意識するようになってしまった。意識しないようにはしているつもりだがやっぱりいきなりは無理だ。段々と顔が熱くなっていくのがわかる。

「そ、その、自分の部屋が分かんなくなっちゃって…」

小さい声でそう言えばラビもうんうんと頷いて、ここは広すぎなんさーと笑ってくれた。ラビはブックマンだからこんなの覚えるなんて造作ない、その証拠に、方舟の時だって沢山の鍵の中から一つの鍵を見つけ出してくれた。そんなラビだからきっと自分のことは不甲斐ないやつに写っているに決まっている。そう思うと苦しくてたまらなくて、誤魔化すために今は取りあえず、はは、と軽く笑っておいた。

「でも今なら二人だけだよな?」

ラビの言ったことがわからなくて少し首を傾げればいきなり抱き締められた。ラビの吐息が耳を掠め擽ったさに少しだけ声を漏らせばくすりと笑う気配がする。

「好きさ、アレン」

自分でも大袈裟じゃないかと思うぐらい反応してしまった。とたん身体中が熱くなって、頭の中もぐちゃぐちゃになって、なにも考えられない。今、ラビは、なんて―――、恐る恐るラビを見上げればラビの瞳に映る自分が見えた。―あぁ、今、自分は大好きな人の瞳を独り占めしてる――。そんなこともあってラビの瞳を見つめていれば彼は優しく笑い、自分の額にキスを落とした。

「大好き」

耳元でそう囁かれればアレンも限界で勢いよく彼に抱きついた。おわっなんて間抜けな声を出しながらもラビはしっかりとアレンを受けとめてくれた。

「あっぶなー!いきなりだとびっくりするさ!」

「…僕も、好きです」

ぎゅうと抱きつきながら聞こえるか聞こえないかどうかぐらいの声で呟けばゆるりと頭を撫でる感触があった。

「あんなに動揺したら隠しててもわかっちゃうさ」

外れてたらどうしようかと思ったけどな、とへらっと笑うラビにつられて笑ってしまう。ラビ自身は笑うなとか結局当たったんだから良いじゃんさ、と少し不貞腐れて居るがそんな子供っぽいところも含めてアレンは彼が好きなのだ。

「好きですよ、ラビ」

「…アレン可愛いさ」

額にキスしただけで真っ赤になるアレンにラビは心底楽しそうに笑って、視線を逸らしてしまうアレンの唇にキスをした。







初のD灰を書きました…ラビの口調よくわからんよ…初だから甘く見てねとか言っておく!

需要は全くないおまけ
見ても見なくても同じ!


(2011/09/03)







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -