臨也は俺の恋人で。男同士で何をやってるんだかとも思ったりするが、好きなものはもうしょうがない。

「臨也ー」

「ん…、なにー?」

いつも喧嘩していた自分等が、信じられないが同棲だ。それもちゃんと婚約もしてあって。だから自分の薬指には臨也と同じ指輪がついている。男同士だから結婚など出来ないがそんなの関係ない。結婚したと思えば結婚したと同じだ。…きっと。多分。そうなるとやっぱり恋人じゃなくて、そう、ポジション的には自分ががいつも下な訳だから自分が妻にあたることになるのか。その、妻、とか思うとむず痒い。でも彼ももそう思ってくれてるんだなと思うとすごく嬉しくて頬が緩むのは抑えられなかった。でもなんどもアホらしいとは思ったのはまあ彼には言わない。

「あー、作ってくれたんだ。シズちゃんだって疲れてるのにそんなに気使わなくていいんだよ?」

「お前も同じだろ、それに俺のが仕事終わんの早いしな」

一人暮らしで必然的に身に付けた自炊が役に立つとは思わなかった。自分の部屋には娯楽物が少なかったため暇潰しのような感じで料理することが多かったのだ。自分が甘党だからお菓子を作ったりしたり。やっぱり、臨也には言わないけど。

「ありがとね、シズちゃん立派なお嫁さんだね」

いきなりそんなことを言われて自分で顔が赤くなるのがわかる。それにけらけらと笑い冗談なのに可愛いなぁ、なんて言われれば恥ずかしくないわけがない。堪えられず俯くといつの間にか側に移動していた臨也が抱き締める。

「でもシズちゃんお嫁さんだし合ってるかも。大好きだよ」

静雄。滅多に言わない名前で呼ぶ。これは冗談じゃないよ、とも言いながら。音をつけるならぼふっと言う感じだろうか。さらに赤くなっているはずだ。

「…うるせぇ」

「嬉しいくせに」

そりゃあ、嬉しくないわけないだろう。

「…少しだけ嬉しい、かも、多分」

「シズちゃんのそういうとこすっごい好きだなあ」

「…もう黙れよ…」

もう限界だ。嬉しいが恥ずかしい。すごい恥ずかしい、尋常じゃないくらいに。くすくす笑う臨也の頬をつねると痛い痛いと同じように笑ってそう言った。

「まぁ冷めちゃうし先食べようよ」

促されようやく席につく。食べる間もたわいもないことを話し、ふとしたことで好きだ、とか言われてそのたびに赤くなってるだろう。それでも一緒に居れるのは楽しいし嬉しかった。喧嘩していたそんな過去はどうでもよくなるほどに。


話しながらだったから食べるペースはどうしても遅くなってしまい、仕事はどうなんだと聞いても当の本人は平気平気とのんきなことを言っている。結局食器を洗い片付けるところまで一緒にやってくれた。

「仕事、ほんとに平気なのかよ」

食器を棚へ戻す手を止めて臨也は苦笑する。
「まぁ大丈夫でもないけどあとでもできるし。どうせならシズちゃんと一緒に過ごしたい」

「一緒に過ごすって言ってもいつもいるぞ?」

「過ごすのと居るっていうのは意味が違う、居るだけじゃなくて話したり触ったりしたいんだよ」

分かった?と笑う臨也に小さく頷けば両手を軽く広げおいで、と彼が促す。恥ずかしかったが今はそれに甘えて腕の中に埋まることにしよう。

「構ってあげられなくてごめん、して欲しいこととかある?」

耳元で囁かれ掠める吐息がくすぐったい。してほしいこと、か。

「……キス」

声が小さかったかもしれないが聞こえてなかったら聞こえて無かったで全然いい。寧ろ聞こえてなくていい。

「…そんなのいくらでもするのに」

可愛いからいいけどね。
喉でくつくつと笑い臨也は静雄と唇を重ねた。




静雄ってなんでこんなに可愛いんだろう


2011/01/30

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