※なきむしずお
「…できねぇ」
「理解する気あんのかよ」
臨也が呆れてため息をつく。俺だって頑張ってんだぞ。成績の悪い静雄は次のテストにむけて特に悪い数学を教えてもらっていた。
「折角教えてるんだからいい加減覚えてよ…」
また臨也がため息をつく。臨也がため息をつくたび胸が痛い。胸が痛いというか折角教えてもらっているのに理解できないことや、迷惑をかけている自分がなんだか不甲斐なくてだ。そんなことを考えたら不意に涙腺が緩んだ。
「……だって」
「言い訳しな、…え」
臨也が驚いてあたふたしだす。
「わ、ちょっ…!泣かないでよ…!ごめん、なんかやなこと言ったなら謝るから!!」
いきなり泣き出した静雄にどうしたらいいのかわからない。いくら嫌いなやつでもいきなり泣き出されては困る。俺が泣かしたみたいじゃないか。というか彼が泣くなんて。あり得ない、と思った。だがあり得ない事などいくらでもある。まず自分に教えてくれなど頼むこと事態があり得ないし、まして彼が天敵の前で弱みを見せるなどあり得ない。
「…俺、迷惑だろ」
ぽろぽろと涙を溢しながらうつむいてしまう。
「……あのさぁ、迷惑だったら端からこんなこと引き受けないよ」
またため息をつきながら言うと涙の量を増やしてしまう。また俺なんか言ったか?いやいやむしろ良いこと言っただろ。
「だっ、て…ため息、ばっかりで…」
ため息。そんなことか。だから涙の量も増えたのか。いろいろ考えながらもしょうがない、と思う。職業柄、愛想笑いばかりしなきゃならないのはそれはそれできつい。だから普段の生活で取引などでは絶対につけないため息が増える、らしい。
「ごめん、でも我慢して?職業柄仕方ないの。…まぁ悪かった。でも別にシズちゃんが嫌とか迷惑とかじゃないんだからね、そこはわかって」
「……わかった」
ちょっと捲し立てて言うと静雄は少し驚いたらしい。あまり俺はムキになったりしないから。
「勘違いさせてごめんね」
なんとなく静雄の頭を撫でてやる。彼の金髪はやっぱり痛んでいてぱさぱさしていた。
「……別にいい」
いきなり撫でられたのが恥ずかしかったのか少し赤くなりながら小さく呟く。不覚にも少し可愛いなと思った。でもそんなの言わない。言ってまた殴られちゃうのはやだもんなぁ。彼の気持ちも知らない彼が思う。彼がそれを言うのはいつになるだろう。彼がその気持ちに気付くのはいつになるだろう。
オチは…?
ボーマスの待ち時間に作ったものを修正して見ました^^
2011/01/16