あぁ糞、イライラする。その原因は、大ッ嫌いな折原臨也が隣に座っているから。ただそれだけ。ここは屋上で今は授業中。要はサボりだ。またサボった原因も臨也なのだけれど。
「シズちゃん」
ムカつく。
「そんな名前で呼ぶなって何回言ったら分かんだ、いざやくんよぉ?」
バキッ。座ったまま屋上のコンクリート破壊。弁償、これで何回目になるんだっけか。少しそっちに思考を向かせ、すぐに元に戻す。
「やだこわーい。シズちゃんってば乱暴」
クスクス笑いながらそばを離れようとはしない。臨也は用も無いのに名を呼んだりしない。仕方なく応えないのも気持ち悪いので応える。
「……んだよ、何か用があんのか」
ふてくされたように臨也の方に目だけやりながら話す。臨也はこっちを向いてあのうざったい笑みを消し真剣な眼差しでこっちを見据える。
「…臨也?」
「静雄」
名前―――。あの眼差しで名前を呼ばれると不覚にもドキッとした。頬が熱い。きっと赤くなってる。なんでノミ蟲なんかに。臨也の右手が俺の頬に触れる。
「ッ触んな…」
手を払おうと自分の手を伸ばすが左手に抑えられる。…力が入らない。ドキドキする。左手を離されるが、払うことができない。
「臨也…?」
「……静雄――」
また名を呼ばれ胸が高鳴る。俺は女か、名を呼ばれたぐらいで。臨也の唇と自分のそれが重なる。始めは触れるだけ。次は深くなって舌が絡まる。くちゅ、と卑猥な音が鳴るが気にしない。角度を変えながら何度も口付けられる。いつの間にか自分の手は臨也の首に回されていて自分から求めていた。
「……っ臨…也…ッ…」
求めるはいいが呼吸ができない。少し口が離れた隙に苦し紛れに声を絞り出す。分かるだろうか。分かってくれたらしく唇を離し、また頬を撫でられる。
「…苦しかった?」
呼吸が整わず声を出すのは苦しい。小さく頷くと臨也はそのあとなにもせずただ整うまで頭を撫でてくれた。
「………怖かった?」
暫くすると整った様子を見ておずおず話しかけてきた。怖い?何が?臨也が?そんなわけ。ぶんぶん首を振ると安堵したように優しく笑って抱き締められる。
「……好きだ、シズちゃん」
…………?
突然の告白に戸惑う。
「え?いざ、…え?」
「好き。愛してる」
赤くなってんだろうなぁ俺。
「俺は」
でも今なら分かる。ずっと分からなかったこの想い。だって嬉しかったから。彼に抱き締められて嬉しかったから。びっくりしたけどキスされて嬉しかったから。
「お前よりもっと、お前が好きだ」
これからは今みたいに喧嘩しないで、話したり出来るかな。臨也の首に手を回し、触れるだけのキスをする。
これからは喧嘩しないで一緒に居ような。
2011/01/13