「―きてー…起きて、シズちゃーん」

「ぅ…んん…ん…」

予定通り起こしてもらったはいいがなかなか起きられない。冬だと尚更。
海に行くとわかっていてもこの暖かいところから出るのは気が引けてくる。

「ほら早くー、海行くんでしょー」

「……いく」

半分顔をだし臨也の顔を見る。
臨也の片手が頬に触れる。温かかったその手はもう冷たかった。
ひやりとしたその手に目が覚める。

「じゃあ着替えよう?」

「…わかった」

渋々ベッドから出る。
裸足で踏む廊下のフローリングが冷たかった。
臨也の家には俺の私物が増えてきていたから着替えについては問題なかった。
休みだしバーテン服以外にしよう。
適当に取り出した服に着替える。これもひんやりしていて冷たい。移動したリビングは暖房がきいていて暖かかった。
朝食だか昼食だかはまた適当に食べた。


上からコートを羽織り臨也のあとを着いていく。ちゃんと言うと手を繋いでだが。
ここが池袋じゃなくて助かった。
新宿なら知ってる人は少ない。
乗り継ぎをしたりしながらやっとで目的地に着く。予想通り人はいなかった。

「足だけ浸からない?」

波打ち際まで歩いていく。
今の時期寒いと言ったのは彼なのに。
静雄が渋ると手を引かれる。

「いいから」

誘われるまま足を波打ち際へと沈める。

「冷てぇ…」

やっぱり冷たい。
打ち寄せる波が足に遮られそこを避けながら海水が流れていく。

「…海って不思議だよね。どこからこんなに湧き出たのか、何故こんなに塩辛いのか、どうしてこんなに広いのか。……誰かが愛するものを失って泣いたとかさぁ、馬鹿みたい。人がこんなに泣けるわけないじゃないか」

臨也は水平線を見つめながら言う。
その声は掠れていてなんだか悲しげだった。
愛するものを失う。
それはきっと人には耐え難い。
平気なやつも居るだろうが静雄にはそれが理解出来ない。静雄は自分の力のせいで愛されることも愛することも出来なかった。
今になってやっと、愛する者が出来たのに。それを失うなど静雄にはなにより辛い。

「もし誰かが本当に泣いたんだったら、…可哀想だな。愛するものを失うなんて、俺にもそれは堪えられない」

潮の香りを吸い込み独り言のようにはっする。
自分の声も酷く掠れていた。

「愛するものがいなくなるほど怖いものなんてない。少なくとも俺はそう思う」

臨也のすぐ後ろにつく。
こうして彼を掴んで引き寄せられるような位置に居ないと、彼がそのまま海に飲み込まれてしまいそうに小さく見えて。

「シズちゃんは優しいね。そりゃあ俺も堪えられるものじゃないさ、人が居なくなるなんて考えられないよ。…でも今はさ、君が居なくなることが…俺にとって一番、怖いんだ」
なにより、怖いんだよ。
臨也の身体が小さく震える。
後ろから引き寄せ抱き締める。
いつもは逆だけど今だけは彼の背中が小さく見えた。いつも苦労をかけているのは俺だから、今はせめて。

「そばに居るから。何処にも行かない。近くに居る」

加減をしながら強く抱き締めて臨也の首元に顔を埋める。
すると彼の冷たい指が静雄の髪を弄ぶ。

「うん。居なくなっても探し出すから」

腕を緩めるよう促され緩めると臨也が向きを変え頬を撫でる。朝と同じ冷たい指先。

「頼むな」

温めるようにその手に自分の手を重ねる。
自分の手も冷たかったけどこうして臨也と体温が繋がっていると思うと冷たいのも平気だった。海水に浸けたままの足はもう気にならない。

「I keep loving you through life.」

臨也はそう言っていつものように口付ける。
あぁ、この海のようにこのまま、混じり合えたらいいのに。
静雄はそう思った。






意味がわからん
何がしたかった自分
そして作るの遅い自分^q^←
こんなよくわからない文を贈りつけていいものか…甘くないし…意味不だし…
返品してくれていいのよ!←
(2011/02/06)



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