雪(南倉甘) | ナノ


今日はとても寒い日だった。冬は暗くなるのが早いので、まだまだ足りない練習も早く終わってしまった。嫌々ユニフォームを脱ぎ、帰る準備を始めていた。隣では南沢さんも一緒に着替えていた。


「南沢さーん、今日一緒に帰りましょうよ。」

服を脱ぎながら隣の南沢さんに話し掛けた。一緒に帰りましょうよ、このやり取りがない日は一度も無い。

「はー、やだ」

「いいじゃないすか。帰り道同じだし…っていつも一緒に帰ってたじゃないっすか」

そう、一度はいつも断られる。何でかは未だに分からない。

「しょーがねえな」

渋々了解を得たが、ほぼ毎日南沢さんの扱いに困っている。いきなり拗ねたりいきなり怒ったり。喜怒哀楽が激しいことは分かるが、その他は謎過ぎる。そんな南沢さんについて考えているとじっと見つめられた。視線が交差してなんだか恥ずかしい。南沢さんに見つめられるといつも自分から視線を外してしまう。負けた気分。


「なんすか?」

「あ?あー、早くしろって視線」

「すいませんねー」


いつもこんな感じなのでやっぱり南沢さんは分からない。最初はクールで優しいのかな。なんて想像してたけど、いい意味で裏切られた気がした。けどクールな南沢さんより今の南沢さんのが好きだけど。そんな事を考えてニヤニヤしていると、用意もやっと整った。

「帰るぞ」

そう南沢さんに言われて後ろをトコトコ歩いてついて行く。なんだかんだで南沢さんは優しい。いつも待っていてくれる。嬉しくてつい笑顔になる。

「なにニヤニヤしてんの?妄想?」

「はは、ある意味妄想っすね」

「なんの?」

「教えませんよ」

「倉間の癖に生意気だなー」

「生意気で結構です」


そう言うと南沢さんはシュンとしてしまったような気がした。南沢さんの顔を覗き込むとピタリと足が止まった。いつもより真剣な表情をして見つめられた。


「なんすか?南沢さん?」

「話したいことが…ある」

「えっ?真剣感じっすか?」

「当たり前」


内心吃驚していた。何の話か分からないしもし嫌いとか言われたら…なんて事も考えた。南沢さんが真剣に話したいこと。検討もつかない。


「倉間、お前好きな奴いんの?」

「えっと、まあいますよ。」

そう言うと南沢さんは悲しそうな顔してそっかと小さい声で言った。何の為に好きな人なんか聞いたのか分からない。けどそれが真剣な話なら吃驚して損した。

「ふーん。俺も居る。誰か知りたい?」

これは知りたいと言わなければいけないパターンのやつ。渋々知りたいと言って教えてもらうことになった。本当は知りたくはない。気になる人なんか聞いたら、失恋してしまうから。そう、ずっと前から南沢さんが好きだったのだ。

「俺は…」

「ん?何?」

「やっぱり聞きたくない。」

そう言って南沢さんにそっぽ向いた。泣いてる顔なんて見せなくない。けど勝手に涙が出てきてしまう。すると暗くなった空から、キラキラ光る雪が降ってきた。「暗いし雪も降ってきたしかえりましょう。」南沢さんの顔もみずにそう言った。きっと引き止めてくれない。だからこの恋には身を引こう。そう思って動き出そうとした。それを見た南沢さんは後ろから強く抱き締めた。心臓がどくんと飛び跳ねそうなくらいいきなりのことで吃驚した。


「待て、行くな…」

「なんですか?」

「悪い、意地悪して。お前の気持ち前から知ってたから…」

「本当に意地悪っすね」

「だから悪いって思ってるって。倉間、お前が好きだ。これでいいだろ?」

「なんか気に食わないっす。もっと…違う言い方できないんすかね?」

「わかったよ。倉間、好きだ。俺と付き合ってくれ。」


真剣な顔をして言われるとなんだか照れてしまう。顔を真っ赤にしてこくんと頭を下に下げた。南沢さんはこれでもかと言うほどのどや顔をしている。すぐにムードを壊す。まあ、そんなところも良いのかも知れない。そう思った。





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皆様最後まで読んでくださって
ありがとうございます!


2012.02.16




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