天京→俺だけに君の愛を頂戴(グロ) | ナノ






片思い。それほど辛いモノはこの世にはないな。そう思った。一番好きなのは誰なの?解らなすぎて壊したくなるような衝動に駆られてしまう。剣城の中の自分はどんな感じなのかな?疑問ばかりが頭の中をぐるぐるして部活の練習なんかに集中出来なかった。自分の前にボールが来たって目の前を通り過ぎるかパスをしても検討違いの所に行くか。なんて今日は一日中絶不調だ。


「松風、いい加減にしろ」


怒った口調で剣城に言われて気を取り直して頑張ろうと思ったが、剣城がキャプテンと喋っていてそれだけで気分がダメになる。そんな自分が嫌いだった。今までは剣城を好きでも独占したいとか、誰かと話してたって気にしなかった。なのに、今は嫉妬してしまう自分が嫌でしょうがない。心の中ではそう思っていた。


「おい、松風聞いてるのか?」

「聞いてるよ…ごめん!」


そう言って走って逃げる。正確には逃げようとする。なるべく剣城から離れなきゃ。そうしないと自分が自分で無くなってしまうから。まだ状況を掴めないのに今剣城の近くにずっといたら嫌われてしまうかも知れない。走ってその場から逃げ出した。が、剣城に手を掴まれていてこれ以上動こうとしても動かない。剣城の顔がとても怖く見えた。


「つっ剣城!離して…よ」

「なんでだ?理由を言ったら離してやる」

「り…ゆう?」


頭の中を駆け巡るのは剣城が好きだと言う事実だけ。でも言ったら変な風に思われるんじゃないかな。なんて考えていたら言えない。でも他に理由なんてない。剣城が好きという事しか浮かばない。ちゃんと真実を伝える事にした。でもなかなか切り出すことなど難し過ぎて出来ない。


「黙ってないでなんか言えよ」

「なんか…って?」

「松風が俺から逃げる理由、それから部活に集中出来ない理由だ。」

「ん…でも…ね、わかんない」

「俺はお前が理由言うまで帰さない」


その言葉が少し嬉しかった。言わなければずっと一緒に居れるのかな?そう思った。それだったら言いたくない。けれど、言わなければいけない。剣城のイライラがなんとなくわかるからだ。嫌われたくない。そう思と口走ってしまいそうになる。それでも言えない。言えないまま、かれこれ一時間経って剣城は痺れを切らしたように口を開いた。


「松風、言う気になったか?」

「えっ、あー…んとね…」

「もし変な事でもびっくりしないし怒らないから言えよ」


剣城は築いているのかもしれない。そう思うとなんだか恥ずかしくなり言わないわけにはいかない雰囲気になった。意を決して口を開く。


「すっ…好きなんだっ。」

「す…き?なにがだ?」

「剣城!」

「お…れ…?」


まだしっかり状況を理解出来ずに戸惑っているような表情を浮かべていた。男どうしで恋愛ってやっぱり出来ないのかな。同じところから焦点をずらさず見つめ真剣に考えていた。真っ直ぐを見ているせいで剣城の視線があちらこちらにキョロキョロしているのが大分わかって笑えた。そんな事考えていたら剣城が喋らないまま、自分も言葉を発さないまま時間がかなり経ち、だんだん日が落ちてきて真っ暗になり始め、剣城の顔ももう見えなくなってきていた。が、そこに居るのはちゃんと解る。今まさに触れたい、でも触れられない。こんなもどかしい気持ちという言葉が最適だ。けれどこんなのは初めてだ。そう考えていたら剣城が何かを言おうと、重い口を開いた。


「ごめ…ん、俺好きな人いる…」

「すきなひと?ねえ、誰?」

「キャプテン…だ」


もうなにも言うことがない。何も考えられない頭が真っ白で今すぐ消えたい気分だ。だって失恋してしまったから。もう何を言ったってきっと聞いてなんか貰えない。両思いになることなんて出来るはずもない。寂しい気持ちが体の中を掻き乱す。自分の体なのに自分の体じゃない気がする。頭の中でもう一人の自分によって勝手に体が動いていくような気がした。きっとそう思うのは、これから起ころうとしている事は自分がしたことと思いたくないからかもしれない。


「まっ松風?な…にする」


真っ暗なグラウンドから明るい部室へと連れて行く。力強く剣城を床に叩きつけた。剣城が何か言っている…が何も聞こえないし何も見えない。自分が今何をしようとしているのか解らない。


「まつ…かぜ?」

「つるぎい〜大好きだよ。俺のモノになってよ?ねえ?つるぎ」

「松風!何度も言わせるな。俺は…」

「聞きたくない!聞きたくない!剣城は黙って俺のモノに成ればいいんだよ!口答えなんて許さないから。」


そういった剣城の腕を縛って動けないように固定した。口も喋れないように塞いだ。これで邪魔するものもいない。


「剣城が悪いんだからね?」


そう言うなり部室をうろうろして何かを探していた。自分の鞄から小さな小さな果物ナイフを取り出した。剣城の目が大きく驚愕していた。初めて見せてくれた顔だ。嬉しくて仕方がなかった。


「剣城?どうしたの?そんな顔して?」


勿論答えることなんか出来るはずがない。それは口を塞がれているから。今のはちょっと狡い。そんな事にも笑えてしょうがない。くくくと小さく笑い剣城を見据えた。


「ねえ、今からいいことしよ?いいことって言うのはね…」


グサッと自分の右目にナイフを惜しげもなく突き刺した。吃驚し過ぎて今何が起きているか解らない剣城の顔を満面の笑みで見つめながら右目を刺すナイフの柄に力を込める。


「あのね、痛くなんかないよ」

「まつ…かぜ?なにを…」


そう言う剣城の目が可笑しいくらい吃驚していて大きくなっていた。これから起こることちゃんと話してあげなきゃね。そう思い話を切り出す。


「えっとね、つまり!俺の右目をあげるからさ、剣城の左目頂戴って事!交換しよ?」

「なっ、お前…なにを…」


剣城に吃驚した顔はやっぱり似合わない。いつものクールさに比べたら今日は全くクールではない。けれど人間誰しも自分が刺されるなんて言われたらきっとこうなるだろう。剣城の許しを請うようなあのうるうるした目、始めてみた。許してあげたいけど、その可愛い目も無視というか、目に入らず剣城の左目にナイフを勢い良く刺そうと構える。あと数センチで抉り出せそうだ。


「やめろ!松風!お願…い」

「やめないよ。剣城、愛してる…よ?」

「やめ、っうあああああああっ」


叫び声と共に、グサッと音がした。激しい痛みもないらしく恐る恐る音のした先を見てみていた。それを微笑みながら見る。目を開いて数十秒経ってやっと自分ではないことに気がついたらしい。ナイフが刺さって血が飛び出しているのは剣城の目ではなく、自分の手の甲だ。なんでこんな事したのかはわからない。ちゃんと剣城の目を刺すつもりだった。けれどいつの間にか自分の手の甲が剣城の目を守っていた。


「なっ、なんで…?」


精一杯出せる声で叫んでいたけど少し聞き取りにくい。そんな剣城を見ていたら視界がぼやけて見にくくなった。


「あのね、大好きな剣城をやっぱり傷つけたくないんだ…ごめんね?本当にごめんね」


泣きながら何度も何度も馬鹿みたいに謝り続けた。当然許してほしいなんて思ってもいない。ただ、気が済むまで謝りたいだけ。


「え…あっ、」


剣城は困った顔をしていた。きっとまださっきの事を理解できていない。そんな剣城を見つめながらゆっくり優しい口調で言った。


「もう、もう何も言わないで?俺はね、剣城の事忘れるように頑張るし努力するし迷惑は絶対かけない。だからまた一緒にサッカーしてくれる?」


俯き黙っていた剣城が顔を上げて力強く頷いてくれた。それを見ていると余計に嬉しくて涙が止まらない。もうこんな優しい人に迷惑は絶対にかけない。心からそう思った。


「剣城…ありがとう。」


そう言うなり貫通した手の甲に刺さっているナイフを思い切り抜き出して、剣城の頬に触れた。生暖かい血が頬に付いてしまった。反対の手で拭き取り、最後に優しく微笑んで部室を後にした。独り善がりなのはわかってる。けれどこれ以上傷つけたくないんだ。だから潔くこの恋から引くことに決めた。寂しいけれど…


「さよなら、大好きだったよ剣城」


心の中で剣城が居なくなった気がした。それと同時に寂しくて涙がポタポタ落ちた。最早右目は見えてはいないが痛みは何故かなかった。きっとそれは剣城を忘れる痛みのが大きかったからに違いない。そんな右目のコトを考えるとクラクラして倒れそうになる。何度もしっかり歩こうとする。けれどもう駄目らしい。意識が遠のいていきバタンと倒れピクリとも動かなくなってしまった。大好きな剣城に想いを伝えられて良かった。これでやっと…「迷惑かけないで済むね。」


最後に一言そう言って息が止まった。




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グロだけのはずが何故か
死んでしまいましたー…
すいません。まだまだ全然勉強不足…
頑張りす…いろいろ!


最後まで読んでくださった方
いつも本当にありがとうございます!


2012.




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