チョコレート(拓蘭甘) | ナノ





久しぶりに俺の家に来た霧野は、
いつものように俺のベッドの上で
ゴロゴロしていた。雑誌を読み漁り
ながら、まさに自分の家みたいに
過ごしていた。

「なんかもっとさ…ないのか?」
「いきなりどうした?」
雑誌から目を離すことなく
俺の問い掛けに答える霧野。
「いや、これじゃあいつも通りだな
って思ってな…」
「神童はいつも通りは嫌か?」
やっとこっちを見てくれたかと
思うとまた視線を雑誌に戻した
「嫌って言うかな…刺激が足りない
なって思って」
「いきなり何言い出すんだよ」

あれ、俺おかしなことでも言ったか
少し顔を赤らめる霧野を余所に窓の
外を見つめる。もっと…恋人らしい
事をしたいなんて思う俺はおかしい
のかな。けど恋人らしいことって…
どんなことなのかイマイチわからな
かった。

「神童!」
いきなり大きな声で俺の名前を
呼んだ霧野。なにかいい案でも
浮かんだのか、雑誌を放り投げ
ベッドから降りて俺の横に来た
「な、なんだ?」
「ね!キス…するか?」
「なっなにをいきなり言うんだよ!?」
驚きを隠せない俺に、普通だろと
言わんばかりに顔を寄せてきた。
「は?刺激欲しいって言ったの
神童だろ?」
なんかちょっと怒ってる…
言ったのは俺だけど…そんな
こと…まだ心の準備が。
「まっまあな…したいっちゃ
したいかもしれないけど」
「どっちなんだよ。」
「そりゃしたいけどな…」
「ならいいよな、ほら早く」

目を瞑る霧野を見つめる。キスって
初めてだからどうすれば…なんて言
ったら馬鹿にされそうだから死んで
も言えないな。霧野のいきなりの提
案でこんなことになるなんて。

「もう、いつまでまてばいい?」
「ごめん、今するから…」

ちょっと怒り気味の霧野のは、
早く早くと俺を急かす。そんな
に早くなんてできる訳ないだろ。
ファーストキスはゆっくりしたい
派なんだよ。そう心の中で霧野に
突っ込んだ。

「ねー…疲れたー」
「わかった、今するから」

意を決して霧野唇に震える自分の
唇を押し当てた。唇を離そうとした
瞬間霧野の舌が口内に侵入して来た
ファーストキスでいきなりディープ
なんて…舌の動かし方がぎこちなく
て、霧野にすべてもっていかれた。
唇を離すと銀の糸が伝っていた。

「なんかっ甘っ!」
「さっきチョコレート食べてた」
「霧野キス…上手だな」
「俺初めてだぞ、神童はそれにしても
下手くそだな。」
「わ、悪かったな…」

何はともあれ無事刺激を求める
事ができた。これからは俺がキ
スの仕方教えてあげる。なんて
霧野に言われてしまったし…。
それはそれで幸せなんだけどな
下手くそって言われたのはかなり
ショックだったけどな…

「ねえ、今日泊まっていい?」
次から次へと霧野はいろんなことを
提案してくる。これじゃあいくつ心
臓あっても足りないよ…
「まあいいけど…」
「大丈夫!変なことはしないから」
「いや、別にそんなこと…」
「じゃあしていいのか?」
「ちょペースがはやいな…」
「嘘に決まってるだろ!」

こんな小悪魔な霧野も可愛くて
仕方がない。綺麗な顔で可愛く笑う
霧野に堪らなくなってぎこちないけ
ど優しくキスをした。やっぱり口の
中は甘くて甘くて…

「甘い?」
「甘過ぎるかな…なんて」


ファーストキスは甘い甘い
チョコレートの味がしました。
甘いのは得意じゃないけど、
霧野とのキスの甘さは特別で
癖になりそうな甘さだった。




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最後まで読んでくださった方
ありがとうございます!

2012.08.14