君の目になるから。 | ナノ




決めた。俺はお前の目になる。
倉間の目から景色を見るより、
俺の目から見た方が断然綺麗に
決まっている。それに他の連中
なんて見てほしくない。だから
倉間の目もすべて俺の物にして
しまおう。

「倉間、今日話したいことがある」
「ん?南沢さんが?」
「ああ、だから帰りあけとけよ?」
「は…はい。」

不思議そうに俺の顔を見つめる
倉間。もうすぐでその目も俺の
物になるんだな。もう松風や剣
城それに神童も全部全部視界に
入らなくなる、これで倉間は俺
のものになるんだ。やっと…
やっと倉間が手にはいるんだ。

「南沢さん、着替え終わりました」
「そうか、なら帰るぞ」
「あっはい!」
「お前さ、俺の家こねえ?」
「え、いいんすか!?」
「いいなら、来いよ」
「はっはい!」

少し緊張した顔やなに考えてるのか
頬を赤らめたり。いろんな倉間があ
るんだな、そのすべてが愛おしくて
堪らない。俺の家につくと倉間は
なんだか静かになっていた。こんな
倉間は初めてだ。

「どうした?座れよ」
「いや、ちょっと緊張しちゃって」
「お前らしくないな」
「だって南沢さんの家なんて…」
「なんだよ」
「ドキドキする…」

可愛いななんて言って頭を撫でれば
犬みたいに膝に顔をうずくめた。
綺麗な髪、サラサラで部活あととは
思えないほどいい匂いをされていた

「ちょ、髪…」
「ん、どした?」
「なんか変な気分になるから」
「別になってもいいぜ?」
「ばっばか言わないでください!」

冗談で言ったつもりはない。
倉間の照れた顔が目に焼き付く。
感じた倉間も見てみたい。きっと
いや、絶対可愛いに決まっている

「そういえば…話したい事って?」
「そうだな、そろそろ話すな」
「はい。」
「じゃ、ちょっとだけ待ってろな」

目を抉り出すには小さなナイフが
一番適応してるかな。あんまりに
も大きいと、ほかの部分傷つけて
しまいそうなので、慎重に行わな
ければならない。

「待たせたな。」
「大丈夫で…す、ってそれ…」
「コレ?ナイフだけど」
「何に使うんすか!?」

恐怖で歪む倉間の顔。大丈夫そんな
怖がる必要ない。ちょっと痛いだけ
だから我慢して?なんて宥めると、
倉間は余計俺から離れようとする。
あんまり手間かけさせると痛くする
よ?脅してみたら倉間の瞳から涙が
零れだした。泣かせてしまった?頭
をなでなでしても雫は溢れるばかり
で、収まる気配を知らない。ああ、
泣かせたいわけじゃなかったのに。

「ごめん、嘘だから。泣くなよ」
「え、嘘?」

ごめん、騙すつもりはないけど
やっと顔を上げてくれたから。
もう今しかない。一気に振り上げた
ナイフを倉間の右目に命中させた。
大きな奇声を上げて倉間は床に倒れ
て目から血を垂れ流している。容赦
なくナイフを抜き、綺麗に眼球をく
り抜く。ぐちゃぐちゃ奇妙な音を立
ててやっと倉間の眼球を抉り出した

「ほら見て?お前の眼球」

見せても反応はなかった?あれ?
倉間は気絶してしまっているらしい
仕方ないな。倉間の右目を軽く手当
てして、下手くそながら包帯を巻い
た。左目も寝てる間に抉ったほうが
倉間の恐怖も少しは無くなるはず。
ぐりぐりぐちゃぐちゃ。血が飛び散
って服や顔についた。これもすべて
倉間のもの。はあ、幸せだな。左目
も綺麗に取り、両目が揃った。一番
よく見えるところに飾った。これで
俺は倉間の目になれるんだな。

「起きろ…倉間」
「んん…南沢さん、なにも見えない」
「大丈夫だ。俺がお前の目になる」
「怖い、怖い…南沢さん?どこ」
「ここにいるぞ。大丈夫。
なにか望みはあるか?」
「ねえ南沢さん、あんたを殺したい」
「なに言ってんだよ、俺は
お前の為に…」
「馬鹿だろ!こんなの誰も望んで
ねーよ。お前なんか大嫌いだ」

どうしてそんなこと言うの…倉間
俺はお前が見てる景色や全部の物
を見たかっただけ。お前が大好き
なだけなのに…なんでなんだよ。

「倉間、俺どうしたらいいんだ?」
「はあ?死ねよ。そしたら
許してやるよ」
「本当か!わかった。」

倉間の願いならなんでも聞いて
あげたい。許してくれるなら何でも
するから。ちょっとだけ待ってろな
すぐに死んでくるから。

「南沢さん俺に殺させて?」
「わかった。じゃあコレ持って」
「手触りからすると包丁?」
「ああ、ほら。ここ心臓だから
そのまま刺せば俺を殺せる」

倉間の手は震えて今にも包丁を
落としそうで危ない。ぐっと腕を
掴んで手を寄せた。ここだよ。

「できない、俺、南沢さん…」
「なんだ?」
「南沢さんが好きだった…
今でも。こんなことされても…」
「…」
「だから殺せない。もう無理
もういい、」

それだけ聞けたらこの世に未練は
ないな。ありがとう、俺も大好き
そう言って最初で最後のキスをして
倉間の腕を引き寄せた。鋭い包丁が
心臓を突き抜けた。倉間に殺される
なんて本望だ。刺した後も倉間の手
は震えている。右手に力を集中させ
て倉間の震える手を握り締めた。力
が上手いこと入らない。

「いや、みなみさわさん!
なんで?なんで。ひとりにしないで
いやだ、いやだ。怖い…傍にいて!
なんでいやだいやだいやだ!」

ごめんな。一人にすりつもりは
なかった。だけど倉間の願いなら
何でも叶えてあげなきゃな。って
大丈夫。ちゃんと電話してみんな
呼んどいたから。神童、浜野、天馬
と剣城。これだけいれば何とかなる
と思う。俺がいなくても大丈夫。
お前は独りじゃなくてみんながいる
自分勝手でごめんな。これが精一杯
倉間にできること。

「ずるいすっよ、そんなの…」
「ご…めんな…?」

もう倉間のきれいな顔も、可愛い
声も聞こえない。握り締めていた
倉間の手もいつの間にか離れて
しまっていた。





「南沢さんに呼ばれるなんて
初めてだね!」
「ああ、そうだな。」
「ちゅーかちょっと楽しみ〜」
「確かここのマンションの二階
だった気がする…」

扉を開くと、奇妙な光景が広がって
いた。血の臭いが充満した部屋。
おもわず鼻をつまんでしまいたく
やるような臭いがした部屋に目を
なくした倉間と血まみれになった
南沢さんが床にぐったりと倒れて
いた。理由を聞くより先に病院に
行く必要があった。早くしなければ
このままでは二人とも手遅れに成り
かねないと思った神童の指示により
倉間と南沢は早急に病院に運ばれた





先に目を覚ましたのは倉間だった。
一向に目が覚めない南沢さんの手を
握り締めて、ずっと独り言のように
話しかけ続けた。いつか、いつか
きっと返事をするはず。それまで
南沢さんの手は絶対に離さないと
決めた。それから一週間の月日が経
ち、それでも目を覚まさない。
やっぱり独りになってしまうのかな

「ねえ、南沢さん…」

当然返事はない。と思っていた。
なんだ?そう返事が返ってきたのは
幻聴だと思った。耳までおかしくな
るなんて最悪だ。

「おい、無視するなよ」
「嘘…南沢さん…本当に?」
「ごめんな、倉間…」
「良かった。生きてて…
俺の目になるとか言って死なれても
困るんすよ…」
「そうだな、ごめんな」
「さっきからずっと謝って
どうしたんすか?」
「俺は最低な奴だからな…」
「大丈夫、南沢さんがいない方が
困るんすよ!」
「…」
「黙らないでくださいよ」
「ああ、わかった」
「もう離れないでください」
「悪かったな、もう離さない…」
「俺、馬鹿なのかな。こんなんでも
南沢さんが好きなんて…」
「馬鹿…なんだろ?」

苦笑いする倉間に最初で最後と
決めていたキスをした。これからは
たくさんたくさんキスができる。
もう絶対不安にさせないから。
そう心に決めて、目の見えない倉間
を優しく引き寄せた。

「倉間、こんな馬鹿な俺とずっと
一緒に居てくれるか?」
「はい、南沢さんこそ…
ずっと一緒に居てくれますか?」
「当たり前だ。」

ぎゅっと握った手はもう絶対に
離さないと決めた。俺はお前の
目になるから…

―――――――――――――――

最後まで読んでくださった方
ありがとうございます!

2012.08.13