あの頃の僕たちは(天京) | ナノ




いつから変わってしまったんだろう
あの頃の俺たちは…まだまだ幼くて
こんなこと考えてもいなかった。
あの頃に戻りたい。そう強く願う。

「ちゅるぎーパスー!」

幼い頃の記憶。サッカーが誰より
大好きだった俺たちは毎日という
程サッカーをやっていた。剣城より
強くなりたい。その一心で毎日練習
を繰り返していた。

「よし、てんま!いいちょうしだぞ」
「んーまたちゅるぎにとられた…」
「だいじょうぶ!まぐれだ!」
「ちゅるぎは強いんだね…」
「れんしゅうすれば強くなれるぞ」

なんて言うから無我夢中に剣城の後
ろ姿を追いかけていた。いつからか
な、俺たちがサッカーの練習をしな
くなったのは。何がきっかけでこう
なったのかな?

「ねえ‥剣城?」
「なんだよ」
「なんもない、ちょっと昔のこと
思い出してただけ」
「…」

見つめ合う二人が行う事と言えば
セックスの一つしかない。その卑猥
な行為を繰り返してそれからすぐに
バイバイ。どっかの冷め切ったカッ
プルみたい。求め合うだけでそこか
らはなにも生まれない関係をもう何
年続けているのだろうか。

「つる…ぎ?」
「もう黙れよ…」

言いたいことは剣城の口の中に吸い
込まれてしまった。ずるいよ、途中
で唇塞ぐなんて。他事考えてると、
ほらもう余裕無くなっちゃうんだ。
剣城は俺の弱いところ全部全部知っ
ていて逆に知らないことがない。

「んンーつるぎそこっやめて」
「うそつけ、毎回ココで感じて」
「ああっだめえ、そんな刺激しないで」

ピンクく色づいた乳首を舐めたり、
手で刺激したり。どこで覚えたのか
甘噛みしてみたり。ソコだけでも、
いくつものパターンで攻めてくるの
だから困ったものだ。

「乳首ばっかり…」
「そろそろほしいのか?」
「いや、ちがくて!べつに…」
「たまには甘えてもいいのにな」

暑くて暑くて顔から火が出そう。
自分から求めちゃうなんてね…
そんな事初めてかもしれない。
やっぱりあの頃にはもう戻れない
そう実感した。

「慣らしていくから力抜けよ」
「うぅ、いつまでたってもなれない…」
「まあそりゃ仕方ないな」
「もう!結構痛いんだからね」
「悪い悪い。今日は一段と気持ちよく
してやるから」

そう言うと剣城は指に唾をつけて
慣らし始めた。ぞわぞわ変な感覚
に教われる。それから快感の波が
押し寄せてくる。

「んんっあ、そこきもちっい」
「だんだん慣れてきたな」
「つるっやあ、あ…だめ」

剣城の太くて長い指で内側を擦ら
れる。ココがいいんだろ?なんて
言って奥を掻き回す。あーあ、頭
なんか働かないよ。自分がなに言
ってるのかどんな顔してるのか…
きっと醜い顔してるんだろうな…

「ああン、足りない。タリナイ…」
「まだ早いだろ?辛くなるぞ」
「いいの、足りないの。剣城が」
「痛くても知らないからな?」

そう言うと剣城に押し倒された。
中を掻き回していた指をずるっと
抜いて、ベルトに手をかけた。
カチャカチャ…その音にさえ欲情
してしまうなんて。あの頃に戻り
たいなんて思う資格もない。最低
なのは充分承知。もうもとには戻
れない、この行為が始まってから
ずっとそう思ってきた。

「じゃあ、いいんだな?」
「…きて」

剣城の固くなった性器が当たる。
ゆっくりゆっくりと中に侵入して
きた。

「あっん、ぜんぶ…入った?」
「まだだ。」

そう言うと腕を引っ張られ剣城の上
に乗せられた。入っていなかった
根本の方まで全部中に収まってしま
った。脳が痺れて勝手に唾が溢れ出
してきた。ああ、だらしないったら
ありゃしないな。わかってるけど。
どうにかできたらもうしてる…

「ほら、動けよ?」
「ああわかっ、たあ」
ズンズン上下に腰を動かす。これが
上手なのか下手なのか自分で動かす
のは初めてだから解らなかったが、
そのまま言う通り続けてみた。
「はああっもっ疲れた…」
「じゃあ変わってやるよ」
「え…?」

ぐるっと体制を回転させてもう剣城
が上にいた。俺の腰を持って剣城の
性器が出し入れされる。律動の速さ
に頭がついていかない。

「あああ、いやっつる…ぎい」
「お前の中、暑いな」
「だめっだめえ。もうきちゃう」

俺ももう無理。剣城の声が聞こえる
とともに温かい精子が中に注がれて
いく。お腹の中が熱い。今日もこれ
きりでバイバイしちゃうのかな?

「なあ?天馬…」
「なにー?」
「この関係やめないか?」
「…そうだね、もうやめよっか」
「ああ。」

長い長い沈黙。これでもう終わり
嬉しいはずなのになんで涙なんか
出てくるのかな?

「なんで泣くんだよ?」
「わかんないよ、終われて嬉しい
はずなのに…なんでだろ、
剣城と一緒に居れなくなるね嫌だ」
「ばかだな、これからは…」
「…?」
「恋人として横に居ろよ」

こんなに嬉しいことあってもいい
のかな。天罰くだらないかな?

「泣くなよ?」
「う゛ぅ、嬉しいんだよ!」
「泣いたり怒ったり忙しいやつ」
「やっぱりあの頃には戻れないね」
「ああ、もう友達には戻れない」

剣城のその言葉が嬉しくてたまら
なかった。戻れないんじゃなくて
戻らないんだよ。だって…

「愛してるから…」




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最後まで読んでくださった方
ありがとうございました!

2012.08.09